当事者であるドライバーの意見は?
「ドライバーの安全と労働環境等に関するアンケート」ではトラックドライバーを対象に「先進安全自動車」や「高速道路の制限速度引き上げ」などの意見調査を実施した。また、駐車場や荷待ち場所の不足、あおり運転やカスタマーハラスメント被害などの実態調査も行なっている。
回答者の乗務車両は、総重量で「5トン未満」が43.4%、「5から11トン」が14.2%、「11から20トン」が9.7%、「20トン超」が20.5%、「トレーラ」が9.1%だった。
衝突被害軽減ブレーキの装着義務化は約8割が「必要だと思う」と回答したいっぽう、意見が分かれたのが高速道路の制限速度引き上げだ。(調査は6月に行なわれたので、大型車の制限速度を80km/hから100km/hまで引き上げるかという議論が行なわれていた段階だということに留意する必要がある)
「100km/hへ緩和すべき」は39.5%、「現行80km/hでよい」は38.5%で両方の意見が拮抗している。「どちらともいえない」は21.7%、「無回答」は0.4%だった。当事者であるドライバーの意見が分かれている以上、より安全策を取るのが常道ではないかと思うのだが、警察庁は12月22日に有識者検討会の結論として「90km/h」へ引き上げる方針を固めている。
改善基準告示で休憩が義務付けられながら駐車可能な場所が少ない大型車にとって、高速道路のSA・PAは不可欠な施設となっているが、特に混雑して駐車スペースのないSA・PAとして東名・海老名SA、名神高速・草津PA、九州自動車道・基山PA、東北自動車道・蓮田SA、圏央道・狭山PAなどの名前が挙がった。
また減速・合流車線上での駐車が常態化している場所としては、東名の中井PA・海老名SA・足柄SA、新東名の浜松SA・駿河湾沼津SA、圏央道・狭山PAなどの名前が多かった。
平均的な待機時間は「1時間未満」と「1時間」が合計で7割近くになったが、「8時間以上」も合計すると1%を超えており、極端に長い待機が常態化しているドライバーも一定数いるようだ。
妨害運転(あおり運転)について聞いたところ、過半数の53.7%が受けたことがあると答えている。行為としては「車間距離を詰められた」「急な追い越し・割り込み」「幅寄せ」「前方もしくは後方での蛇行運転」が多くなっている。
トラック運送業はサービス業に当たるが、15.5%はカスタマーハラスメント(顧客による迷惑行為)を受けたことがあると回答している。迷惑行為を行なった相手としては、個人の利用客、着荷主、初荷主の順で多い。その内容で多いのは「暴言」「権威的な態度」「威嚇・脅迫」などだ。
自由回答欄の意見
速度制限の引き上げを巡ってはドライバーからの意見も多く、自由回答欄には次のような意見があった(一部抜粋)。
(制限速度引き上げに賛成)
「乗用車は大型車・トレーラの速度リミッターを知らず、速度差からあおり運転を誘発している」
「安全面でのリスクは伴うが、労働時間短縮のための方法の一つだと思う」
など。
(同反対)
「トラックが100km/h以上で走っていた時代の事故の多さを知らない人が多すぎる」
「荷物を積んだ状態で速度を上げれば、危険要因が増えドライバーの負担も増える」
など
(どちらとも言えない)
「無茶な配送ダイヤを要求する配車と、それを当たり前と考えている荷主の意識改革が急務」
また、改善基準告示と2024年問題については次のような意見があった。
「業界全体で離職に歯止めが効かなくなってきている。このままでは業界そのものが傾くのではないか」
「労働時間の短縮にも(高速代など)お金が必要。荷待ち時間の短縮は荷主の問題で、運送業者の努力は限界を超えている」
政府が2023年6月に打ち出した「物流革新に向けた政策パッケージ」を受けて物流の適正化に向けて業界団体・事業者などが相次いで自主行動計画を発表している。
国交省・経産省・農水省によると12月26日の時点で103の団体が行動計画を策定しているそうだ。持続可能な物流は運送業者だけでは実現できない。荷主、事業者とともに消費者にも意識改革・行動変容が求められている。
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