経済産業省・中小企業庁は2023年9月の「価格交渉促進月間」のフォローアップ調査結果(速報版)を公開した。物価高を反映して全体的には価格交渉が進み、転嫁できない企業は減少しているが、「トラック運送」では交渉しても転嫁が進まず、価格転嫁率は前回調査に続いて全業種中の最下位となった。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
図/中小企業庁
年2回の「価格交渉促進月間」
中小企業庁は2021年より9月と3月を「価格交渉促進月間」に設定し、原材料費・エネルギー費・労務費等が上昇するなか、中小企業が適切に価格交渉・転嫁できる環境を整備している。
その成果を確認するため、各「促進月間」の終了後、価格交渉・価格転嫁の実施状況についてフォローアップ調査を実施し、業種ごとの結果や順位付け等の結果を公表している。
2023年9月の結果は同年11月28日に速報値が公開された。3万5175社が回答したアンケート調査と、「下請Gメン」による約2000社のヒアリング調査をまとめたもので、全体としては、「発注側企業から交渉の申し入れがあり、価格交渉が行なわれた」割合は3月の調査から倍増した(7.7%から14.4%)。
また、「価格交渉を希望したが、交渉が行なわれなかった」は約10ポイント減少し(17.1%から7.8%)、コスト上昇が一服したこともあり、中小企業が価格交渉できる雰囲気は醸成されつつあるという。
「全く転嫁できなかった」「コストが増加したのに減額された」も減少しており(23.5%から20.7%)、価格転嫁の裾野が広がりつつあるとした。
「トラック運送」は厳しい状況
いっぽう、価格交渉に応じた業種では、「トラック運送」は27業種中22位だった。これは前回調査(2023年3月)の26位より上昇した。
しかし、価格転嫁率は前回に続いて27位となった。転嫁率は4ポイント以上上昇したものの(19.4%から24.1%)、全業種中で最下位という続く厳しい状況が続いている。
つまり価格交渉には応じるが価格転嫁は認めない、というのがトラック運送業界の実情となっているようだ。
なお「価格交渉は行なわれたが、全く転嫁できなかった企業の割合」は、全体平均の11.4%に対して、トラック運送業は29.2%と最も高く、ほかに放送コンテンツ(25.0%)や通信(23.9%)も高くなっている。これらの業種には、「コストに占める労務費の割合が高い」「多重下請け構造」などの傾向がある。
逆に転嫁率の高い業種ほど原材料費の比率が高く、労務費の比率は低い傾向にある。
中小企業庁はこうした傾向を踏まえて、価格交渉・転嫁の現場で活用できるよう労務費の指針を公表、周知する方針だ。
また、発注企業の交渉・転嫁の状況を評価した「企業リスト」を2024年1月に公表する予定で、評価が芳しくない発注企業に対して、所管大臣名で指導・助言を行なうなど、中小企業の賃上げ原資を確保するため、公正取引委員会とも連携し価格転嫁対策を進めていく。
2024年4月からトラックドライバーをはじめ自動車を運転する業務に働き方改革関連法の時間外労働の上限規制などが適用される。これまで通りの働き方ができなくなることによる諸問題は「物流の2024年問題」と総称されているが、トラックドライバーが危惧しているのは給料が下がることだ。
ドライバーの給料が下がれば物流の担い手不足はさらに深刻になるだろう。2024年が迫るなかでも給料の原資となる運賃への価格転嫁は進んでおらず、これまでのところドライバーが恐れていた通りの状況になっている。安定した物流を確保するためにも実効性のある対策が求められている。
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