厚生労働省はトラック運転者を使用する事業場に対する2022年の監督指導、送検の状況について取りまとめを公表した。監督実施事業場のうち、約83%に労基法違反、同じく約58%に改善基準告示違反が認められた。
物流の2024年問題が迫り、制度の上では荷主対策も整えられた。労働環境の改善に向けて、運送会社やトラックドライバー自身が主体的に動くことも必要となりそうだ。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
画像/陸上貨物運送事業労働災害防止協会・フルロード編集部
8割強が労基法違反、6割弱が改善基準告示違反
全国の労働局や労働基準監督署が令和4年(2022年)にトラック、バス、タクシーなどの自動車運転者を使用する事業場に対して行なった監督指導や送検等の状況を、この度、厚生労働省が取りまとめた。
それによると、トラックドライバーを使用する監督実施事業場のうち、82.8%に労働基準関係法令違反があった。また、58.1%に改善基準告示(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準)違反があった。
監督指導は法令違反の疑いがある事業場に対して行なうものなので、これがトラック業界全体の傾向を表しているとは言えないが、それぞれの違反率と実施事業場数はいずれも前年より増加しており、「物流の2024年問題」が迫る中、危機的な状況と言わざるを得ない。
(令和2年以降の監督実施事業場数は2780件 → 3037件 → 3079件、同労基法違反率は81.4% → 81.2% → 82.8%、同改善基準告示違反は56.2% → 57.8% → 58.1% と推移している)
なお、物流の2024年問題とは、働き方改革関連法により2024年4月からトラックドライバーの時間外労働時間に上限が設けられることで、これまで通りの働き方では物流の担い手不足により日本の輸送力が足りなくなり物が運べなくなるという社会課題を指している。
また、トラックドライバーの拘束時間や連続運転時間、「430休憩」などを定めたものが改善基準告示で、こちらも2024年4月から改正された改善基準告示が施行される。
監督指導の事例
実際の監督指導の事例を紹介しよう。長時間労働のおそれがある運送会社で、概要として次のような違反が認められた。
● 36協定(労働基準法36条に基づく労使協定)で定める延長時間を超えて時間外労働を行なわせていた。また、時間外・休日労働時間数が1か月80時間を超える者が最も多い月で12名おり、最長で132時間の者が認められた。
● 法定の年次有給休暇付与日数が10日以上の労働者の一部に対し、年次有給休暇を付与した日から1年以内に5日の年次有給休暇を取得させていないことが認められた。
これに対して労働基準監督署は次のような対応を行なった。
● 36協定で定める延長時間を超えて時間外労働を行なわせたことについて是正勧告した。併せて、過重労働による健康障害防止対策として長時間労働の削減について具体的方策を講ずるよう指導した。
● 時間外・休日労働が月80時間を超えた労働者に対して、面接指導等を実施する体制が確立されていなかったため指導した。
● 法定の年次有給休暇付与日数が10日以上の労働者に対し、労働者ごとに、年次有給休暇を付与した日から1年以内に5日について、取得時季を指定して年次有給休暇を取得させなければならないことを是正勧告した。
指導を受けた会社は指導後に次のような取組を開始したという。
● 配車システムの導入により運転者の労働時間の平準化を図るとともに、荷主に対してキャリーボックスの設置を依頼し、荷をまとめて積み込むことを可能とすることにより労働時間の削減を図った。
● 時間外・休日労働を1か月当たり80時間を超えて行なわせた労働者について、面接指導の対象とすることとした。
● 年次有給休暇を付与した日から一定期間が経過したタイミングで年次有給休暇の請求・取得日数が5日未満となっている労働者に対して、取得時季を指定して年次有給休暇を取得させることとした。
コメント
コメントの使い方24年問題、今のうちみたいな!、誰か死なんとわからんわ。
帰り荷貰って帰ってくるトラックなんてほぼムリでしょ。
現状今日も01:00に出発、18:10積み込み完了、運行終了でアウトだし。
荷主の待たせる行為は罰則付けなきゃ改善はしない。
いくら法令で運行時間決めても荷主、荷受にはハッキリ言って関係ないのだから。
何を違反だの言っても何せこの国の
労基署は段階踏まなきゃ動かないんだから使えないよ。