欧州がバッテリーEVトラックなど貨物輸送のゼロエミッション技術の普及に向けて新たな提案を行なった。バッテリーなどの重量がかさむゼロ排出トラックに対して追加で4トンの積載を認めるというもので、これにより重量増を相殺する。
ただ、新技術が一夜にして普及するわけではなく、背高コンテナ用に全高制限の緩和や、長大トレーラの基準調和、貨物鉄道へのモーダルシフトなども併せて提案している。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Scania・Daimler Truck
ZEVのエクストラ・ウェイトを4トンに拡大
欧州連合(EU)の政策執行機関である欧州委員会は2023年7月11日、環境政策によって経済成長を目指す「欧州グリーンディール」の一環として、貨物輸送のグリーン化に向けた提案を行なった。
この提案は通常の立法手続きを経て欧州議会と理事会によって検討され、承認されれば2025年から施行される。
単一市場を原則とするEUにとって、貨物輸送はその根幹にある。600万人が働く輸送セクターは、CO2排出量の30%以上を占め、対策が講じられなければ排出量は今後も増加する。いっぽうでEUは2050年までに輸送におけるの排出量を90%削減することを目指している。
欧州の貨物の50%以上を運んでいるトラックに関しては、バッテリーEV(BEV)トラックなどゼロエミッション車(ZEV)に追加の重量(エクストラ・ウェイト)を認める政策は従来からあり、現状ではZEVに最大2トンのエクストラ・ウェイトが認められている。
今回はこれを最大4トンに拡大することを提言した形だ。大型車の寸法や重量は規制値に合わせたものになっており、ZEVに対する規制緩和は重量がかさむバッテリーの重さを相殺するためのものだ。
また、技術の進展に伴ってバッテリーなどゼロエミッション技術の軽量化が進めば、ZEVが従来のトラックより多くの荷物を運べるようになるため、よりクリーンな車両と技術に対する動機付けともなる。
4トンという数値は実状を反映したものだというが、現状ではバッテリーによる重量増を完全に相殺するには至らない。長距離輸送用の大型トラックでディーゼル車と同等の航続距離をBEVによって実現しようとすると、バッテリーの重量だけで5トンを超えるからだ。
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