ボルボ・トラックスが中型EVトラックのバッテリー強化を発表した。容量を42%向上した新型バッテリーにより航続距離は最大450kmとなり、中型トラックが活躍する都市部の輸送の大半は電動化が可能になったという。
バッテリーの強化は、より長い距離を走行する仕事の効率化のほか、性能が向上した分のバッテリー搭載数を減らして積載量を確保するなど、BEVトラックの実用性を高めることに直結する。トラックの電動化で先行するボルボの取組は、日本の商用車市場の方向性を占う意味でも興味深い。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/AB Volvo
中型BEVトラックのバッテリーを強化し航続距離を延伸
スウェーデンのボルボトラックスは、2023年6月20日、中型バッテリーEV(BEV)トラックに強化した新型バッテリーを搭載すると発表した。これにより同社の中型BEVトラックの航続距離は最大450kmまで延伸し、さらに多くの輸送業務の電動化が可能になるとした。
ボルボの中型BEVトラックレンジ(車両総重量=GVW16.7トンの「FLエレクトリック」および同27トンの「FEエレクトリック」。両車とも日本市場には投入されていない)は、容量を42%拡大した新型バッテリーにより、よりクリーンで静かな都市輸送を加速する。
同社によると、今回のバッテリーのアップデートにより中型トラックが使用される都市部の輸送では、大半のルートや業務の電動化が可能になるという。輸送用トラックだけでなく、塵芥車(ゴミ収集車)や公共工事用の建設車両など架装物への動力供給が必要な車両もePTOにより電動化が可能だ。
バッテリー改良の結果、ボルボFLエレクトリックの航続距離は最大450kmに、同じくボルボFEエレクトリックは275kmになった。バッテリーの総エネルギー量が多いと、長いシフトの仕事でも途中充電の必要がなくなり、仕事の効率化にも寄与する。
ボルボ・トラックスのSVPプロダクト・マネジメント、ジェシカ・サンドストローム氏は次のようにコメントしている。
「最大450kmという航続距離により、弊社の中型電動トラックは都市部で働くディーゼル車の全てを置き換えることができるでしょう。ボルボFLおよびFEエレクトリックは、排出とノイズを最小化し、環境とドライバーと都市で暮らすべての人に利益をもたらします」。
また、バッテリーのエネルギー密度向上は、少ないバッテリーで同じ量のエネルギーを利用できるということでもある。すなわち、短い航続距離で充分であれば、搭載するバッテリー数を減らすことで積載量を増やす構成が可能となる。
BEVトラックにとって、バッテリーの搭載数と積載量のトレードオフ関係は重大な問題で、実用性を高めるためにはエネルギー密度を高める必要がある。ボルボFLエレクトリックに最大6基搭載する新型バッテリーでは、1基減らす毎に500kg積載量を増やすことができる。
「一部のお客様にとっては、航続距離より積載量の確保が何よりも重要です。私たちは最適なソリューションを選択できるように、お客様と緊密に取り組んでいます」。(同氏)
コメント
コメントの使い方