欧州で建設用トラックの電動化が急加速! 特装車への電力供給が進化し実用化の道を拓く【バウマ2022】

特装シャシー「アロクス」のBEVプロトタイプが登場

 メルセデス・ベンツの「アロクス」トラックは建設業界向けに堅牢性と耐久性を高めた大型特装シャシー。こちらも間もなく電動化されるようで、バウマでは特装車メーカーのパウルグループと共同開発した「プロトタイプ・バッテリー電気アロクス」(以下、アロクスBEV)が公開された。

 輸送用のBEVトラックでは電費効率や低床化・架装性で有利な電動アクスル(駆動軸にモーターなどを組み込んだもの)を採用する例が増えているが、パウルはアロクスBEVで中央モーター(セントラルドライブ方式=モーターからシャフトを介して車軸を駆動するもの)を選択した。

 これは、オフロード・重量物用アクスルとして実績のあるアロクスのプラネタリーアクスルを継続使用するためと、建設現場での利用を想定してグラウンドクリアランスを確保する必要があったことが理由だ。

 バウマで公開されたアロクスBEVは、8×4シャシーのリジッドトラックで、リープヘル・ミシュテクニク製電動ミキサー「ETM-905」を搭載していた。ミキサー車用のPTOは特殊なものを用いることが多いが、展示車両は架装物のミキサードラムまで電動化されているため、シンプルな構成となる。

 ミキサー車は生コンクリートが固まらないように常に攪拌する必要があり、なかなかエンジンを止められない。電動化によるCO2削減効果が大きい特装車だ。

 2023年にドイツ国内で少量販売を開始する予定のアロクスBEVは、60kWhのバッテリーパックを6~7個搭載する。その内、2~3個はキャブバックに、残りはシャシーに搭載し、150kWの充電機で20-80%充電は1.5時間とする。

 販売するのはは3軸車及び4軸車で、架装はいずれもリープヘル製のミキサー、平ボディ、ダンプを予定している。

三菱ふそうの欧州向け「eキャンター」も世代交代

欧州で建設用トラックの電動化が急加速! その背景にあるものは?【バウマ2022】
IAA2022で発表された欧州市場向けeキャンターの次世代モデル

 ダイムラー・トラックの子会社で、メルセデス・ベンツ・トラックスとは兄弟関係にある三菱ふそうもバウマ2022で、BEV小型トラック「eキャンター」の欧州仕様・建設業界向けモデルの展示を行なった。

 出展されたeキャンターは車両総重量(GVW)8.55トンのトラックで、電動機械式PTOとドイツ・ウンシン社製のロールオフ・チッパー(ダンプ車の荷台部分=ベッセルを取り外し可能なトラック)を架装していた。ホールベース3400mmのコンフォート(2m幅)・シングルキャブで、積載量は3635kg。バッテリーパッケージは「M」だ。

 よりサステナブルで経済的な運用を可能にするため、新世代のeキャンターには様々な改善が施された。中でも大きいのが車型の大幅な拡大だ。

 前世代ではホイールベース3400mmのGVW7.49トン車が唯一の車型だった。今回はホイールベースは2500mmから4750mmの6種類となり、GVWは4.25トンから8.55トンの範囲をカバーする。モーター出力は110kWと129kWの2種類を用意する。

 バッテリーはeアクトロス・ロングホールと同じく最新のLFP電池を採用し、S,M,Lの3種類のパッケージを用意した(選択可能なパッケージはホイールベースによって異なる)。

 Sはバッテリー容量が41kWhで航続距離は70km、Mは同83kWh・140km、Lは同124kWh・200kmとなっている。ちなみに前世代のバッテリーオプションは81kWh容量(航続距離100km)のみだった。

 衝突時の安全性のため、バッテリーはフレーム下の高剛性スチールブラケットに収めた。キャブはコンフォートキャブの他、1.7m幅のスタンダードも設定する。

 新世代で大きく向上したのが汎用性だ。電動の機械式PTOをオプション設定したことで油圧が必要なボディを動かすことができるようになり、建設セクターが求める多様な特装車の設定が可能となった。

 そのほかに、快適性と安全性のために多機能ステアリングやLEDヘッドライト、巻き込み防止や衝突被害軽減ブレーキなどのADASも標準搭載。また、衝突センサーが事故を検知すると走行用の高電圧ネットワークを停止するというBEVならではの機能も搭載する。

次ページは : 既に量産を開始しているeアクトロス300

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