ニューモデルも投入! 建設現場でよく見かけるコンクリートポンプ車の静かなる進化

ニューモデルも投入! 建設現場でよく見かけるコンクリートポンプ車の静かなる進化

 コンクリートポンプ車は、建設現場にミキサー車が運んできた生コンを、配管やホースを通じて打設現場に圧送(圧力をかけて送る)するトラック。圧送用のポンプと、配管を伸び縮みさせるブームを備えているのが特徴だ。

 バリエーションは、高い圧送能力を誇る中〜大型ベースのピストン式と、機動性に優れる小〜中型ベースのスクイーズ式の2種類が存在。

 ピストン式のなかでも、大型2軸(4×2)シャシーがベースの車両は、大型エンジン由来のパワフルな圧送能力と、都市部など狭い地域にも乗り入れできる機動性を持ち合わせる量販カテゴリーだ。

 そんな日本の人気カテゴリーにこのほど、国内トップメーカーの極東開発工業と、ドイツのプツマイスターが相次いで新型モデルを投入! 2社の新型コンクリートポンプ車に迫ってみた!

文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
※2021年6月14日発売「フルロード」第41号より

【画像ギャラリー】この巨大ロボット感がたまらない!! 日本とドイツのメーカーが相次いで投入した新型コンクリートポンプ車


■実用域の圧送性能向上と短尺化で使いやすさ向上! 極東開発工業の新型「ピストンクリート PY120B-26D」

極東開発工業が昨年11月に発売した新型「ピストンクリート PY120B-26D」。従来型と同じGVW17t級の大型2軸シャシーがベースだが、ホイールベースを400mm短尺化することで機動性を向上している
極東開発工業が昨年11月に発売した新型「ピストンクリート PY120B-26D」。従来型と同じGVW17t級の大型2軸シャシーがベースだが、ホイールベースを400mm短尺化することで機動性を向上している

 極東開発工業は、塵芥収集車やタンクローリなど各種特装車の製造で知られる総合特装車メーカー。コンクリートポンプ車では国内トップシェアを誇る。

 新型「ピストンクリート PY120B-26D」は、1995年発売の従来型「ピストンクリート PY115A-26C」の後継モデル。従来型は同社のコンクリートポンプ車全体の約2割の販売比率を占める最量販機種という。

 約20年ぶりとなる今回のフルモデルチェンジでは、メインポンプの改良で最大吐出量が115立方メートル/hから120立方メートル/hに向上するなどしているが、最大のトピックは「実用域」の性能が大幅に向上されたことだ。

 実用域とは、実際の現場で多用される50〜60立方メートル/hの吐出量帯のこと。この領域を高めるため、新型はメインポンプの制御方式を従来の油圧式からセンサー式に変更。これにより緻密かつ正確な制御を実現し、実用域の圧送能力を従来比で最大35%向上している。

 新型開発の背景には、近年耐震性確保のため普及が進む「強化生コン」の存在がある。強化生コンは従来の生コンよりかたいため圧送時の抵抗が大きく、従来型は市場の要求に対して圧送能力が不足し始めていたという。

メインポンプの改良により最大吐出量を向上。また、各部に搭載したセンサーによる制御を新たに採用することで、現場で多用される50〜60立方メートル/hの実用域の圧送性能を向上。従来と同じ吐出圧力で従来以上の吐出量を圧送することができるようになった
メインポンプの改良により最大吐出量を向上。また、各部に搭載したセンサーによる制御を新たに採用することで、現場で多用される50〜60立方メートル/hの実用域の圧送性能を向上。従来と同じ吐出圧力で従来以上の吐出量を圧送することができるようになった

 いっぽう、開発陣にとって一番優先順位が高かったのがホイールベースの短尺化だ。なぜなら、26m級が活躍するフィールドは都市部。道路や現場が狭く、従来型は設置時に現場から車体の一部がはみ出してしまうこともあったそうで、喫緊の課題だったという。

 新型は、従来と共通の大型2軸シャシーを400mmカットし短尺化。これにより後軸の軸重が許容オーバーとなるのを補うため、従来後方に配置していた水タンク(残コン処理用の洗浄水を入れるタンク)を前方に配置するなど、上モノ全体のレイアウト変更を行なっている。

 M型と呼ばれる4段屈折式ブームについては、従来型の最大地上高25.7mを継承しながら素材や板厚、リンク機構を見直し、全体で10%もの軽量化を実現。そのいっぽうで、一部に高張力鋼板を使用して剛性アップも図っている。

新開発のM型4段屈折式ブームは、従来ブーム内蔵式としていたリンク機構を外部に移設。ブーム本体のスリム化とともに、素材や板厚の見直しにより軽量化。一部には高張力鋼板を新たに採用し剛性も高めている
新開発のM型4段屈折式ブームは、従来ブーム内蔵式としていたリンク機構を外部に移設。ブーム本体のスリム化とともに、素材や板厚の見直しにより軽量化。一部には高張力鋼板を新たに採用し剛性も高めている

 このほか、フロント、センター、リアの3箇所に搭載するアウトリガーは、リアアウトリガーを従来のH型からA型に変更し振動を低減。燃料タンクは少しでも大きいほうがいい、という現場の声に答えて300Lを標準装備する。

 新型は、圧送能力の向上、ショートホイールベース化、ブームの軽量化などにより商品力を大幅に向上。さまざまな現場に使えるオールマイティな特性に一層の磨きをかけたことで、さらに活躍の場が広がりそうだ。

リアアウトリガーはA型(ハの字型)に変更。車体後端部のホッパー内部にあるSバルブ(ポンプの吸い込みと押し出しの切り替えを行なう装置)の振動低減を図る
リアアウトリガーはA型(ハの字型)に変更。車体後端部のホッパー内部にあるSバルブ(ポンプの吸い込みと押し出しの切り替えを行なう装置)の振動低減を図る

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