■カーボンニュートラル達成のため、いずれBEVとFCVの2つに集約/三菱ふそう
では、三菱ふそうはどう考えているか?
「ディーゼルエンジンは現在でも三菱ふそうの車両にとって重要なパワートレインです。しかしそのいっぽうで、私たちは可能な限り、ゼロエミッション化がもたらすメリットを生み出すために、徐々に電動パワートレインに移行していく計画です
カーボンニュートラルな社会実現に向けた世界的な動きに加え、最近の日本政府によるカーボンニュートラル化への目標もあります。
当社では2039年に国内で販売するすべての新型車両をCO2ニュートラル化することを目標に掲げています。このビジョンに伴ない、燃料電池トラックの量産を2020年代後半までに開始します。
三菱ふそうは、真のCO2ニュートラルの輸送は、バッテリー式電気自動車、または水素を燃料とした燃料電池自動車のいずれかのみで実現すると考え、水素エネルギーおよびバッテリー式電動車の開発に向けて取り組んでいます。
同時に、三菱ふそうの製品ポートフォリオは、お客様だけでなく、自動車業界に適用されるグローバルな政策・規制を遵守し、今後もお客様ならびに社会のニーズに応じた展開を行なっていきます」。
■合成燃料との併用で2050年以降もディーゼル延命の可能性も/UDトラックス
最後にUDトラックスの回答である。
「内燃機関は段階的に減っていく方向にあると思いますが、現在研究が進められている合成燃料(e-fuel)などのカーボンニュートラル燃料との併用を考慮すると2050年以降も残るとみています。
そのため、今後も内燃機関のさらなる効率化と、Well to WheelでのCO2削減を同時に図っていかなければならないと考えています。
内燃機関の段階的な減少に合わせて、克服すべき課題があります。まずは航続距離で、トラックと乗用車では異なる要求性能の代表的なものです。
トラックに要求される航続距離を確保するために、現時点の電動車、燃料電池車などの代替え技術を使った場合、多数のバッテリーや水素タンクを搭載しなければならないため、積載量が減り、荷台スペースが縮小してしまいます。
そのため、普及に向けて技術革新はもちろん、政府による政策、財政的措置などの支援が必要不可欠になってきます。
さらに、大型トラック用の充電ステーションや水素の充填ステーションなどのインフラ整備、そしてこうした設備をオンデマンド予約できるなどのコネクティビティ技術の進化が必要になってきます。
経済合理性のあるパワートレインユニットの開発、適正な水素供給価格を含めたインフラ整備、物流事業者の運行パターン改革の三要素が揃うことで、電動車の活躍の場は広がります」。
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■各トラックメーカーの今後のディーゼルエンジンへのスタンスは?
以上、トラックメーカー4社の回答をご紹介したが、まだまだ将来のパワートレインがどうなるか未知数な部分が大きいので、「ズバリこうなる!こうする!」とはなかなか言い切れないものの、それでも各メーカーのスタンスの違いが窺い知れるようで興味深い。
まず日野自動車だが、「2050年までに電動車化率100%を目指すが、当面はHVが大型車のCO2削減の現実的な解」と答えている。
もちろん日野のHVはディーゼルハイブリッドで、HV技術は世界に冠たるは日野のお家芸。HVはBEVではないが電動車両であるから、そのベースとしてもディーゼルエンジンはしばらく延命するということ。
ちなみに、いすゞがカミンズから中型車用エンジンの供給を受けることを決定したことで、将来的に大型・中型・小型の純国産のディーゼルエンジンを製造するのは日野だけになる公算が強い。
いすゞ自動車は、将来のパワートレインに関してはまさに全方位の展開で、内外の多くのメーカーともアライアンスを結んでいる。
でも、その中で注目すべきは、EV、FCV、HEVなどともに、LNGやCNGなどのディーゼルの代替燃料にも着目しているところ。実際にCNGトラックを販売しているのは日本ではいすゞだけで、さらにLNGの大型トラックも開発している。
加えて、ユーグレナと共同でミドリムシ由来のバイオディーゼル燃料を研究するなど、代替燃料の可能性を追求。「ディーゼルのいすゞ」の看板はそう簡単には下ろさないはず。
いっぽう三菱ふそうは、やはりダイムラートラックグループの一員なので、ダイムラーの戦略通り、BEVとFCVの2本立て戦略を推進し、カーボンニュートラルに取り組む姿勢を鮮明に打ち出している。
BEVの「eキャンター」を世界に先駆けて発売したことでもわかる通り、この分野でのリーディングカンパニーを目指すはず。2039年までに国内で販売するすべての新型車をカーボンニュートラル化するという目標は、きっぱり退路を断って突き進むという決意の表明のようだ。
最後にUDトラックスだが、刻々と変化するトラックを取り巻く環境や要求を冷静に判断している印象が強い。
その中で、「合成燃料(e-fuel)などのカーボンニュートラル燃料との併用を考慮すると(内燃機関は)2050年以降も残るとみている」というのはなかなか興味深い。
いすゞの傘下に入ったことで、次の大型トラックのフルモデルチェンジのタイミングである2025年あたりに大きな動きがあると思うが、いすゞがボルボと戦略的提携を結んだことで、UDトラックスにとって引き続きボルボの動向が技術的な指針となるだろう。
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ディーゼルエンジンというのは、物流を担うトラックにとって最適で優秀な内燃機関である。だからこそ、カーボンニュートラルという大命題を前にしても、そう簡単には捨てきれないジレンマがある。
確かに、ディーゼルエンジンの延命など考えずに、次の選択肢を定めてそこに全力投球するというやり方もあるだろう。そのほうが速やかに目標を達成できるかもしれない。しかし、「見切り発車」の危うさか感じられるのも確かだ。
日本のトラックにとって、最も現実的で実効的な次のパワートレインは何なのか? ディーゼルエンジンに「サヨナラ」を告げる日は、もう少し先かもしれない。