トラックで搭載が進むAMTってオートマとは似て非なるものだって知ってました?

トラックで搭載が進むAMTってオートマとは似て非なるものだって知ってました?

 いすゞギガの「スムーサーGx」、日野プロフィアの「プロシフト」、三菱ふそうスーパーグレートの「シフトパイロット」、UDトラックスクオンの「エスコット」などなど、トラックでは「AМT」と称するトランスミッションの搭載が進んでいる。

 大型トラックのみならず、中型トラック、小型トラックでも同様で、世界的に見てもAМTは、マニュアルトランスミッション(МT)をしのぐ勢いで普及してきているのだ。

 AМTは、「セミオートマ」とか「機械式オートマ」などと呼ばれることもあるが、実は、オートマチックトランスミッションとは構造的には似て非なるもの。どこがどう違うのか、AМTの最新事情と共にお伝えしよう。

文/多賀まりお、フルロード編集部 写真/多賀まりお、フルロード編集部
※2019年9月発売トラックマガジン「フルロード」第34号より

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■AMTとATの違いとは?

米国アリソン社製のトルコンAT「アリソン1000」。中型車向けの6段ATだ
米国アリソン社製のトルコンAT「アリソン1000」。中型車向けの6段ATだ

 AMTというのは「オートメーテッド・マニュアル・トランスミッション」の頭文字で、早い話がマニュアルトランスミッションを自動化したもの。構造はMTとだいたい同じである。

 いっぽう乗用車で圧倒的な支持を得ているトルコン式ATは、クラッチの役目とともにトルクを増幅する機能を持つ流体継手のトルクコンバータとプラネタリーギア(遊星歯車)で構成され、AMTとは構造的に異なるものである。

 遊星歯車式のトルコンATに対して、AMTは基本的にマニュアルトランスミッションの操作を自動化したものなので、トルクの増幅やトルク抜けのない変速といった機能は備わらず、悪路や低ミュー路での走破性はMTと変わらない。メンテナンスでは寿命が延伸するとはいえ、クラッチディスクの交換も必要だ。

アリソンのトルコンATは、路線バスのほか、日野レンジャー・ダンプ(写真)やいすゞの防衛庁向け大型トラック、UDの大型総輪駆動除雪車などにラインナップしている
アリソンのトルコンATは、路線バスのほか、日野レンジャー・ダンプ(写真)やいすゞの防衛庁向け大型トラック、UDの大型総輪駆動除雪車などにラインナップしている

 ただし、クラッチの代わりにフルードカップリングと湿式多板クラッチを組み合わせたいすゞ自動車の中型トラック用のスムーサーFx(※1)をはじめ、デュアルクラッチ機構を組み合わせて、レンジ切替時以外は(遊星歯車式のような)瞬時の変速をもたらすボルボの新世代I‐シフトやZFのトラクソン。

 半クラッチ制御によりクリープトルクを発生させる三菱ふそうトラック・バス/メルセデス・ベンツのシフトパイロットなど、最新のAMTにはトルコンATに近い機能を持つものも増えてきた。

 最近はベースのマニュアル仕様が存在しないAMT専用機が多い。

※1小型トラック用のスムーサーExはステータを備えた事実上のトルクコンバータ

 いっぽう、トルコンATも積極的なロックアップ制御や多段化により、オンロードでの燃費を向上。トルク増幅機能を活かしてエンジンのダウンサイジングを成立させ、車両トータルで燃費向上や軽量化をもたらした例も見られる。

 トルコンATとAMTの得失は、用途や使い方によって大きく変化するので単純な優劣はつけがたい。ただし、双方とも進化を続けていることは確かで、「トルコンは燃費が悪い」「AMTは制御が雑で使いにくい」といった先入観は見直しても良いように思う。

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