総輪駆動トラックの名門タトラでは『普通』が異端!! 自衛隊3トン半とほぼ同サイズの6×6車「T810」とは?

『タトラらしからぬタトラ』の理由

T810Mと典型的なタトラ車のシャシーの比較
T810Mと典型的なタトラ車のシャシーの比較

 なぜT810だけが「普通のシャシー構造」を用いているかというと、もともとはROSSという同国企業が1997年に開発した「R210.12」というクルマだからである。

 チェコ軍は、1953年(当時はチェコスロバキア)に同国の自動車メーカー・プラガが開発した軍用トラック「V3S」を制式採用し、以降40年以上にわたって用いられてきた(いまも現役)。冷戦体制崩壊後の90年代後半、国防省はようやくその後継車の調達計画を策定し、R210.12が選定された。しかし計画は凍結され、R210.12の開発・生産に向けて多額の投資を行なっていたROSSは、1998年に破産してしまう。

 2002年、R210.12の知的財産権と製造権を取得したのがタトラで、その開発の継続と生産、そして販売を行なうことになった。タトラはこのクラスのトラックを、久しくラインナップしていなかったからである。
 
 2005年に完成したT810は、R210.12のラダーフレームシャシー構造というスタイルこそ継承したものの、その設計はタトラによって改められ、駆動系も一新された。ただ、キャビンコンポーネントとエンジンは、ルノーV.I.(現ルノートラックス)から調達するという点は、R210.12と同様である。

 T810は、2007年にチェコ軍に制式採用され、08年から納入を開始した。2010年には、民需向けEuro-V(5)適合モデル「T810-C」も発売された。T810-Cは、軍用より重いGVW16トン級の6×6トラックとして展開している。ただし欧州最新の排ガス規制Euro-VI(6)適合モデルはない。

 いっぽう2016年からは、ルノーキャビンとともにSTANAG4569レベル1規格の装甲キャビンも用意される純軍用モデル「タクティック」の展開をスタート。そして、さる2025年8月にチェコの防衛装備見本市IDET2025でデビューしたのが、最新モデルの「T810M」だ。

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