諸外国はトラック輸送の「多重下請」をどう防いでいる?
とりまとめでは、トラック輸送の多重取引を防ぐための諸外国の例として、米国と韓国の規制を紹介している。
米国の運送業界は日本などとは異なり、個人でトラックを購入し、個人事業主として運送業に従事するオーナー・オペレーターと呼ばれるドライバーが多い。オーナー・オペレーターは仲介業者(ブローカー)から輸送業務を請け負うため、米国の運送業界で貨物の取次は不可欠の役割を担っている。
ただ、多重取引による運賃の中抜きや事故発生時の責任の所在が不明瞭であることが問題視され、2012年に運送業の仲介業務を切り分ける法規制が行なわれた。
貨物の仲介にはブローカーライセンスが必要で、事業者は運送業とブローカーの両方のライセンスを取得することも可能だが、受注する際に自身の立場を明示する必要がある。再委託するにはブローカーとして受注する必要があり、運送事業者として受注した場合、再委託はできない。
一般にブローカーはオープンなウェブサイトに貨物情報を掲載しており、オーナー・オペレーターなど小規模な事業者は条件に合った仕事をブローカーと直接取引する。この仕組みにより運送事業者の規模によらず、他の運送事業者を介さずに取引を行なうことが容易となり、多重取引を回避している。
いっぽう、運送業の形態が日本に似ている韓国では、2013年に新たな制度が導入された。
韓国ではもともと運送事業者としての再委託は禁止されており、受注した運送の再委託には貨物自動車斡旋事業の許可を得なければならなかったが、新たに「実績申告制」「直接運送義務」「最小運送義務」が課されることになった。その内容は次のようなものだ。
・運送または斡旋実績を国に申告しなければならない
・運送契約を締結した場合、年間貨物の50%以上を直接運送しなければならない
・ほかの運送事業者から委託された貨物は、原則として直接運送しなければならない
・運送事業者は国が定める基準(年間平均運送売上高の20%)以上の貨物を運送しなければならない
韓国では他社に委託できる回数は2段階までに制限されている(なお、韓国では元請を1段階と呼称しており、2段階は日本でいう「1次請け」に相当する)。
受託した貨物の50%は直接輸送することが義務付けられ、再委託される貨物量を制限している。運送と斡旋の両方の実績を国に報告する必要があり、実績が最小運送に満たない運送事業者は市場から退場することになる。
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