高性能バッテリーと豊富なバリエーション
eデイリーが搭載する電動パワートレイン(バッテリーパック、モーター)は、イヴェコのグループ企業・FPTインダストリアルが開発したものである。
モーターはセントラルドライブ式で、短いプロペラシャフトを介して後車軸を駆動し、最高出力は140kW(188PS)、最大トルクは400Nm。高速道路での追越加速時には、「ハイパワー機能」で出力を『ブースト』できるという。トップスピードは時速120km。また、運転機能では、アクセルペダルのみで走行・停止を操作できる「ワンペダルドライブ・モード」が実装されており、電費とブレーキパッド摩耗の抑制が行なえるとしている。
バッテリーパックは、リチウムイオン電池の中でも高性能とされる三元系(NMC)リチウム電池(米・マイクロヴァスト社製)を採用、クラス最高のエネルギー密度を達成しており、パック1基あたり37kWhの容量をもつ。
eデイリーでは、このバッテリーパックをラダーフレームの幅いっぱいに収まる形で搭載し、フレーム左右には架装や艤装品のためのスペースを確保している。これは、デイリーが車両全幅2.01m・フレーム組幅862mmと、日本車よりも全体的に幅広く設計されているためで、実車は写真でみる以上にボリュームがある。ただパックの天地サイズが31cmほどあり、上部はフレーム上面とほぼツライチになっているものの、下部はかなり突出している。
バリエーションは車両総重量(GVW)に応じて5つの車格、6つのホイールベース長を設定しており、それに応じて、バッテリーパックの搭載数(1基・2基・3基)をあらかじめ設定している。その組み合わせ数は計40にも及び、ユーザーニーズにきめ細かく対応しようというコンセプトがうかがえる。
小型EVトラックでは優秀な航続性能
もちろん航続性能も、組み合わせによって異なってくる。例えば、IAAに展示された実車2台のうち、GVW4.25トン・ホイールベース3450mm・後輪シングルタイヤ・パック2基モデルのシャシーは、航続距離200km。もう1台のGVW5.2トン・ホイールベース3750mm・後輪ダブルタイヤ・パック2基モデルのシャシーは、航続距離185kmだった。
これはメーカーが算出した国連WLTPモードでのシミュレーション値であり、しかも展示車は前者が冷凍車、後者が高所作業車という形態(多彩な架装性をアピールしている)なので、架装物も電力を使うことになる。したがって現実の航続性能は短くなるはずだが、いまの小型EVトラックとしては、かなり優秀なほうに入るだろう。
なお、最も小さく軽いGVW3.5トン・ホイールベース3000mm・後輪シングルタイヤ・パック1基モデルは航続距離120km、逆に最も大きく重いGVW7.2トン・ホイールベース4750mm・後輪ダブルタイヤ・パック3基モデルは航続距離180kmで、最も航続距離が長いのは、GVW4.2トン・ホイールベース4100mm・後輪シングルまたはダブルタイヤ・パック3基モデルの300kmとされている。
満充電に要する時間は、普通充電(AC11kW)がパック1基で3時間10分、同2基で6時間20分、同3基で9時間30分、充電率20→80%の急速充電が同1基(DC40kW)で30分、同2基(DC80kw)で30分、同3基(DC80kw)で50分である。
eデイリーは、車型バリエーション、航続性能の2点をみただけでも、さすが欧州ベストセラー小型トラックに相応しい内容で、日本製EVトラックにとっては、依然として手ごわいライバルであり続けそうだ。
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