世界各国のトラックをメーカーごとに紹介する「世界のトラック」。今回は信頼性の高いオフロードトラックに定評があるアメリカの「マック」をピックアップ。ブルドッグのトレードマークを採用する理由など同社の歴史や最新ラインナップを、多賀まりお氏が解説する!!
文/多賀まりお
写真/マック
※2020年6月15日発売「フルロード」第37号より
自社製コンポーネントを手掛ける数少ないトラックメーカー
ブルドッグのトレードマークで知られる「マック」のルーツはジョン(ジャック)とオーガスタス(ガス)のマック兄弟が1900年にニューヨーク州ブルックリンで創業した「マック・ブラザース・カンパニー」である。
最初の製品はバスだったが、1905年にペンシルヴェニアのアレンタウンに本拠を移してトラックの本格的な生産を開始。兄弟は11年に権利を売却しジョンはマックを去ったが、持株会社の下で事業は継続された。
16年には中型トラックのACモデルを発表。第一次大戦中に使用した英国軍からブルドッグの愛称をつけられるなど信頼耐久性で定評を得たマックは、その後ブルドッグをシンボルマークに据え、オフロードトラックを軸に大型車で成功を収めた。
67年には石油会社のシグナル社の傘下に入るが、79年からルノーが段階的に株式を取得。90年にルノーV.I(当時のルノーの商用車部門)の完全子会社となった。さらに2000年にボルボがルノーV.Iを買収したことでマックは現ボルボグループの一員となり、2009年には本拠をVTNAのあるノースカロライナ州グリーンボローに移した。
現在はオンハイウェイモデルのフラッグシップである「マック・アンセム」をはじめ、オフロード特装用では「グラナイト」、キャブオーバー型の「テラプロ」などをラインナップ。マックは自社製のパワートレーンやアクスル、サスペンションまで広く手掛けるアメリカでは数少ないメーカーの1つだが、現在の展開はボルボ製のコンポーネントが中心になっている。
●マック・アンセム
初代の省燃費型モデル「ビジョン」に代わって2018年に登場した最新のオンハイウェイトラック。キャビン骨格はピナクルと共用するが、省燃費性能を追求した外装にエアダム、スカートなどのエアロパーツを伴って約3%の燃費向上を謳う。キャブはデイキャブ、または70インチスリーパーを設定する。
●ピナクル
30年以上の歴史を持つ「CH(コンベンショナル・ハイウェイ)」モデルの現在形。2003年に発表された。近〜長距離輸送のほかローリー系など広範に使われる。マックらしい逞しさを感じさせる外観だが、アンセムと同じくヘッドライトはLED。インパネもアンセムと共通だ。
●グラナイト
マック伝統のヘヴィデューティモデル。2001年から現行のキャブとともに「グラナイト」の車名が冠された。ダンプ/ミキサーなどの特装系単車のほか、重量物運搬用のオフロードトラクタにも使われる。軸配置は4×2、6×4のほか総輪駆動、前2軸の8×4や後3軸の8×6、リフト機構付きマルチアクスルなど幅広く対応する。
●テラプロ
コンクリートポンプ車や除雪ダンプ、あるいは塵芥車といった建設〜特装用途で活躍するヘヴィデューティなキャブオーバーシャシー。軸配置は4×2、6×4のほか後3軸駆動の8×6やツインステアの8×4など多彩に用意され、35000〜81000ポンド(約15.8〜36.7t)の車両総重量に対応する。
●LR
2015年に発表されたLEの改良型。最新の塵芥車用ローエントリーキャブである。キャブフロアは地上高17インチ(約43cm)と低く、通常の前側蝶番式もしくは上下折りたたみ式/折戸式の運転席ドアとともに優れた乗降性を発揮。室内も左右のステアリングイチ、起立した運転姿勢に対応するなど塵芥の収集作業に特化した内容だ。
●MD
新たに中型車市場に参入するマックが2020年に発表したクラス6/7モデル。4×2の単車用シャシーで、タイヤサイズは11R/22.5が標準だが、クラス6には19.5インチホイールと低扁平タイヤによる低床仕様もある。一枚式のフロントウインドウを擁するキャビンは大型車と共用。
コメント
コメントの使い方