公正取引委員会が独禁法の「優越的地位の濫用」をタテに、荷主・発注元を摘発する動きが出てきた。全日本トラック協会(全ト協)などでも実効力のある厳正な執行を歓迎している。トラック運送を委託する発注元の立場で「濫用」とされないためには、自ら積極的に価格交渉・協議の場を設けることが重要となる。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部、図/公正取引委員会
トラック運送における独禁法と下請法
公正取引委員会と聞いて、「ああ、独占禁止法を執行する機関ね」「うちにはあんまり関係ないね」といったところが世間一般の認識だと思う。
しかし、独占禁止法には、中小事業者等に不当に不利益をもたらす優越的地位の濫用を摘発する項目があり、排除措置命令・課徴金納付命令といった行政処分を行なったり、さらに悪質重大な場合は刑事処分を求めて検事総長に告発を行なうことも可能だ。
また、独占禁止法の関連法として「下請法」(下請代金支払遅延等防止法)があり、いわゆる「買いたたき」など親事業者による下請事業者に対する優越的地位の濫用を禁止している。
買いたたきの定義は複雑なところもあったが、価格転嫁を円滑化するために解釈の明確化が行なわれた。
例えば、運送業においてエネルギー価格の上昇分を取引価格に反映する必要があるにも関わらず、協議することなく運賃を据え置いたり、価格転嫁を認めない理由を回答せずに従来通りの価格を据え置くことは買いたたきに当たり、独禁法・下請法違反となるおそれがある。
違反した事業者は併せて貨物自動車運送事業法による荷主・元請事業者等への働きかけの対象となる。
つまり、内閣府の外局として独立した行政機関である公正取引委員会は、「弱きを助け強きを挫く」いわば正義の味方でもある。逆に言えば、優越的な地位を濫用する企業の「悪」を暴く、まさしく強面のコワ~い存在だ。
その公正取引委員会が、価格交渉を行なわないなど買いたたきに該当するおそれのある行為が見られた事業者名を公表する異例の措置に踏み切った。公表された企業・団体には佐川急便やデンソー、JA全農など大手の荷主や元請会社が含まれており波紋が広がった。
今回の公表は公正取引委員会が公開している「独占禁止法Q&A」に該当する行為の有無を調査したもので、法令違反を認定するものではない。とはいえ発注元の行為は、社会問題となっている「物流の2024年問題」やトラックドライバーの労働環境にも重大な影響を及ぼす。
諸悪の根源となっている不適正な取引慣行に、公正取引委員会が鉄槌を下す! ……というと言い過ぎかもしれないが、トラック運送業の適正取引を推進している全ト協も、こうした動きを歓迎しているようだ。
コメント
コメントの使い方日本アクセスは本当に最悪ですね
優位的地位の濫用は卸業者に多いですよ。仕入先に強気。文句を言わせず、物流倉庫を持ち、作業員をケチる。足りない戦力は下ろしに来たドライバーを使って細かく卸場所を指示。不備があると手配した仕入先に電話せず運送会社に怒鳴ってクレーム。本来は物流倉庫の仕事なのに貴重なドライバーにやらせている。手待ち時間も長く荷降ろし箇所は少ない。下ろす場所も狭い。ただ、自社の配送トラックのバースだけは非常に多い。