高効率と高トルクを両立
セミでは、3基のモーターのうち1基が高速走行用の高効率ドライブユニット(ハイウェイモーター)、残りの2基が高トルクをもたらす加速ドライブユニット(アクセラレーションモーター)となる。
このうち、常に接続されているのはハイウェイモーターで、高速道路などの走行中は他のモーター(加速ユニット)をアクスルから切り離すことで電費効率に優れた走行を可能とする。つまり2軸の駆動軸のうち1軸がフリースピンとなるので、高速の定速走行では6×2駆動となる仕組みだ。
加速時などトルクが必要なときは加速用のモーターが接続され、急な上り坂でも速度低下が無いばかりか加速まで可能だという。
加速や登坂時のこうした制御は、ドライバーがアクセルを踏むことで自動で行なわれる。2基のアクセラレーションモーターはクラッチ装置で断接されるが、接続はシームレスに行われ、ドライバーによる手動操作は不要だ。
ディーゼル車ではトルクアップの仕組みとして今やターボチャージャーが不可欠となっているが、エンジンが低回転の状態から充分な過給圧が得られるまでレスポンスが悪化する「ターボラグ」が避けられない。必要な時に加速用モーターを接続する仕組みによりそうしたラグを回避したのは、ディーゼル車に対する利点といえる。
減速時や下り坂では回生ブレーキが働く。もちろんサービスブレーキとしてディスクブレーキも搭載しているので、協調ブレーキ制御になっているはずだ。積極的な回生はバッテリー残量の回復のほか、ブレーキパッド/シューの摩耗を抑え、メンテナンスコストの低減にも寄与する。
また、トライモーターを含めた駆動系はトラクションコントロールの上ではディーゼル車より有利で、ジャックナイフ現象やロールオーバー(横転)を抑制できる。通常のトラックにもトラクションコントロールはついているが、より安全なトラックになっているというのがマスク氏の説明だ。
映像からフロントサスペンションは独立懸架だ。またトレーラとの連結時はエアサスが自動で車高調整するなど、ドライバーの仕事効率化についても訴求している。
テストランで500マイルを走行
充電は1メガワットクラスのDC(直流)急速充電に対応する。これはテスラの独自設計となる充電規格「スーパーチャージャー・V4」によるもので、同・V3と比較して3倍近い電流密度を実現した。
V4充電システムは、高電圧ケーブルの内部にある高電圧送電線(コンダクタ)が、冷却水配管に内蔵する形になっており、こうした積極的な冷却によりメガワット充電に対応する。V3も冷却は行なっているが、冷却パイプとコンダクタは別々の状態で高電圧ケーブルに収められている。
スーパーチャージャーV4は間もなく(2023年?)登場するとみられる。なおマスク氏はイベントでセミのほかに「サイバートラック」もV4に対応すると明言した。
また、500マイルという航続距離がただのカタログスペックではないことを示すために、実車によるテストランを行ない、その様子を時間以外はほぼ無編集の動画として公開した。
テストランは11月25日に行なわれたもので、GCW82000ポンドのフルロードで、カリフォルニア州フリーモントから同州サンディエゴまでの500マイル強(地図上では830km)を、同一ドライバーにより途中充電なしで走り切っている。
この走行による充電率(SOC)の変化は97%→4%で、500マイルの走行にバッテリー容量の93%を使っていることが分かる。
コースの前半はベイエリアのほぼ平坦な道だが、後半はサンホアキン・バレー南部の山岳路を通り、途中のグレープバイン付近で標高4136ft(1260メートル)の峠を越えている。この付近は6%勾配の急坂が10km近く続き、トラックのブレーキ故障が多いことで悪名高い。
セミによるテストランでは上り坂で急激にSOCが低下するものの、峠を越えると(=下り坂で)回復に転じていることが伺える。これは回生ブレーキによるもので、下りではかなり積極的にエネルギー回生を行なっているようだ。このためSOCは部分的に増減を繰り返しながら全体としては走行距離に応じてリニアな直線を描いている。
また、マスク氏は加速モーターによって急な上り勾配でも速度低下がないことや、下り勾配ではサービスブレーキの過熱による故障を防げることなどもディーゼル車に対する利点に挙げた。
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