魚沼市で見かけたアメリカントラックの謎を解く
まだ第2回目だというのに、早くも立ち往生しそうな「ナニコレ珍カッケ~!」である。何せ今回は、写真がコレ1枚しかなく、アメリカントラックとおぼしきこのブルーの車の正体に迫るのは、なかなか難題だからだ。
それは、カーナビ任せで新潟県魚沼地方を走っているときの一瞬の遭遇であった。「あれ? あのトラック、何だ!?」。駐車場の片隅にまったく場違いなアメリカントラックが止まっている、それを助手席からあわてて撮ったのがこの1枚である。
通りすがりなので確かな地名は不明、写真から得られるヒントはスズキの看板だけである。実は、その看板の下の黄色地の部分に社名とおぼしき文字が見えるのだが、当日は雨降りのため画像が鮮明ではなく、いくら拡大してもその文字は読めなかった……。
しかし、本当の謎解きは、ここから始まるのだ!
まずは、このトラックのメーカー名を調べてみる。アメリカントラックでキャブオーバータイプは少数派だが、無いことはない。ただし、どれも「ロボット顔」で、門外漢には全て同じように見えてしまう。特徴的な2段グリルをはじめ細部を照らし合わせていくと、おそらく1995年以前に製造された「インターナショナル9000」シリーズではないかと推測された。ちなみにインターナショナルは、1902年にシカゴで創業した「インターナショナル・ハーヴェスター」がその前身で、農業機械をはじめトラック、建設機械、ガスタービンなど、事業の多角化を進めたが、1980年代に入って経営が悪化し、各部門を売却。トラック部門だけがナヴィスター・インターナショナルに社名を変更し、インターナショナルブランドのトラックとして今日に至っているメーカーだ。現在のラインナップは、9000シリーズを含め、すべてボンネットタイプのようだ。
写真のトラックは、こうして15年以上前のキャブオーバータイプの「インターナショナル9000」シリーズとほぼ特定できたが、トラクターではなく単車であること、手前のSUVに隠れてよく見えないものの、特徴的なボディ架装をしていることなど、謎はまだまだ残されているのだ。
となると、このアメリカントラックの持ち主を特定しなければ、謎は解明されない。そこで、写真に写り込んでいるスズキの看板を頼りに、現地のディーラーに電話してみる。
「お仕事中にすみません、つかぬことをお聞きしますが……」。
残念ながら、何軒か電話したものの、すべて空振りである。
「ウーム、困った」。
とここで、あることを思い出した。このアメリカントラックを見た後、ほどなくして「中国館」という名のお店を見かけたのだ。
「中国館って万博みたいな名前だけど、何の店なんだろうね? 外観は喫茶店ぽいけど、ウーロン茶の専門店かね?」。
そんな会話を同乗者と交わしていたのだ。そこで「中国館」を検索してみると、ありました!、魚沼市の中華料理屋でした(しかしユニークな店名ですな)。そこで住所が判明。さらに、ここでヒラめきました! 写真のアメリカントラックにはナンバープレートが付いていないようなので、おそらくこの駐車場に長く停め置かれているのではないか、となると、アレに写り込んでいる可能性が高いのではないか……。アレとは、そうグーグルのストリートビューである。
そこで、「中国館」からさかのぼってストリートビューで確認していくと、ほどなくしてスズキの看板を発見。そこで視野を右に振ってみたところ、ありました! あのブルーの車体のアメリカントラックがちゃんと写り込んでいます。これって、ちょっと感動ものです。
さらに回り込んで「ヒント」を探すと、工場の壁に「日新自動車整備工場」の文字、地名は新潟県魚沼市中原、ここに間違いなさそう。
早速電話すると、まさにドンピシャリ! 突然の電話にもかかわらず、社長さんとおぼしき清水さんに丁寧に応対していただいた。
それによると、あのインターナショナルのトラックは、かつて新潟県の地質調査のためフランスの会社から購入したもので、実は同じような車両が3台導入されたそうだ(うち1台はボンネットタイプだった由)。なぜ地質調査かというと、新潟は日本でも有数の石油産出地域なので、その調査が主な目的だったのではないかという。確かに写真を見ると、ボディ架装はレントゲン車のような感じで、元は地質調査用の機器が搭載された特種車だったと聞いて納得である。
清水さんは、もともとアメリカントラックが大好きだったので、用済みとなった車両がこのままスクラップにされてしまうのがしのびなく、それを譲り受けて、自社の工場の敷地で保管しているのだという。ちなみに清水さんは、日新自動車整備工場の社名からも分かる通り、車両の修理はお手のものなので、チャチャっと直して、もともとの保管場所である新潟県長沼市の自動車修理工場からここ魚沼市中原まで仮ナンバーでトラックを自走してきたそうだ。今では、車両前後のウインチをはじめ調査機器等は取り外されており、自走することもないが、いつまでも大切に保管したいという。
アメリカントラックとはとても結びつかないこの米どころの地に、トラックを愛してやまない人がいることは、嬉しい限り。まして、解けない謎をさらりと解いて、キャップも上機嫌。いつか清水さんとインターナショナルのトラックに是非「再会」したいと思うのである。