トラッカーのための「道草」知っと講座
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コラム
「緑のカーテン」の主役に躍り出た「ゴーヤ」
今さらながらだが、「ゴーヤ」を取り上げたいと思う。ゴーヤは、もはや説明が要らないほど一般化した健康野菜だが、沖縄や九州では以前から食べられていたものの、全国区になったのは、ここ10年来のことだろう。ニガウリの別名の通り、初めは誰しも「こんな苦いもん、食べられるか!」と感じたと思うのだが、そこがゴーヤの深謀遠慮、この苦みにこそ今日のゴーヤの隆盛の秘密がある。
考えてみれば、食物の中で「苦み」を売りにしているのは、秋刀魚のワタとか苦うるかとか、あるいは蕗味噌くらいのもので、どれも脇役以外の何物でもない。このほとんど未開拓の「苦み」のジャンルに、「ゴーヤチャンプル」という一大料理を押し立てて参入すれば、全国制覇も夢ではないとゴーヤは考えたのだ。しかも天もゴーヤに味方する。これまでなら苦い食べ物などNGであったろうが、「良薬は口に苦し」を想起させるゴーヤの苦みが、昨今の健康ブームに乗って、逆に身体にいい野菜とのイメージを定着させるのに役立ったのだ。実際、温暖化が進む日本列島で、沖縄などでよく食べられるこの熱帯アジア原産のウリ科の食物は、日本人の味覚を「苦いが、旨い」に変えつつあり、もはやキワモノ野菜の面影はなく、夏野菜の新たな盟主といっても過言ではないほどの上げ潮ぶりを見せている。
さて、ゴーヤの絶好調はそれだけではない。直射日光を遮る「緑のカーテン」としても今や引っ張りだこ。節電の2011年夏、街を行けば、至るところでゴーヤの緑のカーテンを目にするはずだ。プランターによるお手軽な家庭菜園でも簡単に葉が茂り、実がなってしまうところがゴーヤのスゴいところ。ちなみに節電の今年は爆発的に人気が出たため、ゴーヤの苗の出始めのころは普段の2倍近い値段がついていた。たまたま愛知県の豊明の花卉市場に取材する機会があったので、何でゴーヤの苗の値段が高いのか聞いたところ、まさに豊明市場で価格コントロールをしていたことが判明。普段の倍の値づけでも飛ぶように売れたというから、市場関係者はめざといのである。ちなみに我が家でも毎年プランターでゴーヤを育てているのだが、今年はあまりにも苗が高かったので種でゴーヤを育てたことを伝え、商売人に一矢報いてやった。
園芸関係で「ゴーヤ」の名称に統一されたのは、つい最近のことだ。それ以前は、園芸店では「ツルレイシー」「レイシー」または「ニガウリ」の名称が一般的だった。レイシーは果物のライチーのことで、あのイボイボがライチーに似ているからツルレイシーと呼ばれていたそうだ。
我が家でそのツルレイシー、すなわちゴーヤを育てて10年近くなるが、プランターで育ててもほとんど失敗したことがなく、むしろゴーヤがなりすぎて困ってしまうことがよくあるほどだ。ゴーヤの実は、完熟すると緑から黄色に変わってしまい、食べられないことはないそうだが、ヘナヘナでまず食べる気がしなくなる。そのまま放っておくと、黄変した実はさらに裂開し、赤い種が姿を見せる。赤いのは種を包むゼリー状の仮種皮で、甘いので沖縄ではこの赤い種を子供たちがよくしゃぶって楽しむそうだ。
ゴーヤは、風に揺らぐ葉の風情もいいし、黄色い小さな花も可愛い。「緑のカーテン」としても打ってつけで、しかも実も収穫できるわけだから、まさに一石二鳥の植物である。「じゃ、キュウリでもいいじゃん」という人がいるかもしれないが、キュウリは葉が茂っている期間は意外と短く、葉も茎もトゲトゲしているし、プランター栽培はややむずかしい。そのほか、「緑のカーテン」としては、琉球アサガオ(宿根アサガオ)やツタもよく用いられるが、やはりゴーヤが一番家庭向きだと思う。ちなみに我が家では、今年はゴーヤと共に、「オカワカメ」や「食用ヘチマ」を試しているのだが、どれもプランターでもよく育っている。特に「オカワカメ」は、葉っぱがワカメのような食感で栄養価も高いというから、「ゴーヤ」の対抗馬として有望だと思う。緑のカーテンづくりはなかなか楽しいのだ。 (キャップ)
これがオカワカメです