「ろうじぇんかじや」の想い出「ノウゼンカズラ」
今の時期、トラックのキャブの中からでも、この華やかなオレンジ色の花は嫌でも目につくはず。中国原産の落葉のつる性植物「ノウゼンカズラ」である。漢字では「凌霄花」と書き、凌霄(ノウゼン)には何やらコムズカしい解釈があるようだが、そういうのはこの暑さ厳しき折、かったるいのでパスさせてもらっちゃいます。
カズラとはつる性植物のことで、漢字では「葛」とか「蔓」と書く。要するにクズやツタのように何にでも巻き巻きしちゃう植物の総称と考えていいようだ。徳島の祖谷のかずら橋(サルナシ=シラクチカズラなどのカズラ類を使って作った吊り橋)などは有名だが、園芸関係では「初雪カズラ」とか「風船カズラ」なんていうのが流行りである。
ところで、私もその一人だが、「ノウゼンカズラ」の名前を山本周五郎の同名の小説「凌霄花」(新潮文庫 短編集「あんちゃん」に収録)で知った人も多いのではないだろうか。周五郎の小説では抒情小説に数えられるこの物語は、幼なじみの二人が、武家の一人息子、商家の娘(ひさ江)という出自の違いを超えて結ばれるものの、生活の違いなどからひさ江は身体をこわし三年で破局を迎えてしまう。しかし、妻への思いが断ち切れない男は、かつて二人で交わした「凌霄花の咲いたらその樹の下で逢おう」という約束に導かれて、山道を登っていくとそこには別れた妻が待っていた……。そこには、ひさ江が幼いころ教えてくれた「ろうじぇんかじや」が名残りの花を咲かせていた。ノウゼンカズラは、どこか南国を感じさせる夏らしい花だが、夏はいつしか想い出になるように、夏の抒情をも感じさせる花でもある。 (キャップ)
こちらはアメリカ原産のアメリカノウゼンカズラ、もしくはその雑種。ノウゼンカズラより細長く、朱色が強い。
ノウゼンカズラは一日で落花する「一日花」だが、つる先に次々と花を咲かせるので見応えがある