今回の震災の被害はまったく想像を超えるものでした。被災地のすさまじい状況が明らかになり、被災された方の悲嘆や絶望にふれるにつれ、胸がふたがれ、言葉を失ってしまいます。テレビ画面の向こうとこっち、ほんの紙一重の差なのに、暖かい部屋で呆けたようにテレビに見入っている自分…。罪悪感をおぼえないわけにはいきません。
そんなこんなで、あまりにも悲惨な状況を前にして、なかなかブログを更新する気持ちになれないでいたのですが、一昨日のブログで紹介した「しょうた君」のその後について、安否を問うメールも頂いています。分かる範囲で彼の消息をお伝えしようと思います。
ちなみに「しょうた君」は、ふだんは主に4トン車で首都圏のコンビニ配送を担当している20代半ばのドライバーなんですが、この時期、年に一度、各地で開かれるコンビニのセミナーのため、コンドルを駆って全国のイベント会場を巡る超長距離の旅に出るんだとか。イベント会場への搬入の仕事は時間に余裕があるので、イベント会場近くの旨いものを食べ、観光をし、トラックに積んであるスキーやらアイゼンやら釣り道具やらで遊びまくるんだそうです。たぶん「持ち出し」の方が多いんでしょうが、むかし風の言い方をすれば、独身貴族だからこその羨ましい旅で、実はこのホームページで、『しょうたの「食って!遊んで!チョッと仕事して!」』といったようなタイトルで、ブログを連載してもらう予定でした。
その原稿がメールで送られてきたのが3月10日。仙台港近くのイベントホール「夢メッセみやぎ」への搬入の仕事で宮城県に来たので、前回は見られなかった松島や瑞巌寺を観光した、待望の生牡蠣を食べたというものでした。
そこへ今回の大震災。ご覧になった方も多いと思いますが、その「夢メッセみやぎ」が何10台もの車を巻き込んですさまじい津波に襲われた映像がテレビで何度も何度も流されました。もし、今もここで仕事をしていたら、トラックもろとも津波に引き込まれた可能性は高いはず。ちなみに「夢メッセみやぎ」で津波に遭遇し、屋上で難を逃れた方のブログに、その時の模様を記録した画像が載っています(http://ameblo.jp/love-song0520/entry-10828844898.html)。しょうた君はそのとき、どこにいたのか? 以下は彼のブログです。(キャップ)
■3月9日
仙台「夢メッセみやぎ」での搬入終了。仕事が終わったのは午後五時半くらいでした。
それから岩手県・浄土ヶ浜までノンストップで移動です。浄土ヶ浜着いた頃は日付がとっくに変わっていました。
リアス式海岸(45号)は、景色は最高ですが、くねくねしていて、やっぱり走りにくいな。
トラックで少し寝て、浄土ヶ浜の御来光を拝みました。
世界が平和でありますように…。ステキな彼女が出来ますように…。
あっ、今日なんも食ってねーや。明日は旨いもん、食えますように…。
■3月10日
浄土ヶ浜から帯広まで大移動です。
浄土ヶ浜出たのが、七時少し前。そこから青森まで270キロをノンストップ。
今年は雪が多いと思ってたけど、青森県の十和田くらいまではあんまり雪は無かったです。
青森駅の方へ近づくにつれ、雪が増えてきましたけど…。
青森では三内丸山遺跡を観光させていただきました。遺跡の入口メッサ立派な建物になってるのに、入場料無料。ビックリ。さらにガイドからシアター、博物館まで無料。
お得ですよ、遺跡観光。
冬は雪で、発掘場埋まってるけどね。
午後二時半。フェリーに乗って北の大地へ。
あっ、今日も何も食ってねーや。大丈夫か?、オレ。
■北海道上陸!
北海道へは青森のフェリー乗り場からは2社のフェリーが出ています。「津軽海峡フェリー」と「青函フェリー」です。船舶にもよりますが、津軽海峡フェリーの方が豪華ですね。あくまで個人的な感想ですが、青函フェリーは、安いけど、それなりです。今まで乗ったどんなフェリーより「それなり」ですね(笑)。![]()
フェリーでは、風呂に入って、1時間くらい寝れたかな?
あまりにも腹が減ったので、函館に着いて「あじさい」のラーメンでエネルギー補給です。函館はやっぱり塩ラーメンですね、王道です、旨いっす!
でも今回は、函館はラーメンを食っただけで、素通りです。いい街なんですけどね。
なぜって、釧路に行きたいんですよ。釧路は旨いモンの宝庫ですからね。
函館から釧路目指し、ひたすら走ります。
函館から釧路まで580キロくらいあります。
走って、走って、走って、ちょっと鹿をはねて、走って、走って、帯広で力尽きました。
知ってます? 長時間運転すると背骨を中心に節々が痛くなってきます。風邪と似た状態になるんですよね。しかし、疲れました。
ちなみに鹿と接触したのは本当です。でも、奴はピンピンしていたし、トラックも損傷なしで、ラッキーでした。
■3月11日
帯広で目覚めたのが、午前11時。それから走って釧路に着いたのが12時半くらいでした。
ここでは、和商市場に行って寿司屋で海鮮ちらしを食します。ちらしに入ってた醤油漬けの水ダコの卵を食って、プチ感動。旨いですね、あれ。場内探したけど、売ってないから、余計希少価値が高いですね。![]()
そのあとは、勝手丼に挑戦。勝手丼とは、場内で売ってるライスを買って、魚屋で売ってる刺身とかを自分で勝手に選んで乗せるどんぶりのこと。
乗せたのは、クジラとバフンウニ、アブラカレイ、ハッカク、ぶどうエビ…、珍味だらけだな。ヘッヘッヘッ、旨いのなんの!
昨日忙しなく動いたこともあり、「釣りでもすっか!」と思いたち、釧路港の堤防へ。
地元の無職の気のいいおじさんとダベりながら、午後2時頃から釣り糸を垂らしていたんですよね。
そしたら、お巡りさんがメッサ走って来たんです。「エッ、ここ、釣り禁止なの? 逮捕されちゃうの?」と思ったんですよ、そりゃもう。
でも、ただの津波の避難勧告だったから、「何だよ、驚かせるなよな!」と心の中で悪態ついて、竿をしまいました。
それがまさか、あんな大惨事になるなんて…。
後でワンセグテレビを見ていたら、釧路港も津波に襲われ、水没したみたいです。
本当にありがとう、お巡りさん! 心の中で悪態をついちゃったけど、ひょっとするとあなたは命の恩人です。
その日は釣りが中止なったので、即刻「釧路湿原観光」に切り替えました。釧路湿原。マジ絶景です。これが緑に覆われた季節に見たら、さぞかし凄いんだろーな。夏場にまた来たいわ。
そのあと網走に移動して、就寝。おやすみなさい。
■その後の話
あとでキャップに聞いたら、皆さんにご心配いただいたそうで、申し訳ありません。札幌でのセミナーも急きょ中止になり、今は北海道で足止めを食っていますが、ハイ、何とか無事でいます。ありがとうございます。
でも、あの後「夢メッセみやぎ」があんなことになるなんて本当に信じられない思いです。それに、たぶん生牡蠣を食べた松島のお店も津波にやられてしまったのではないでしょうか、ツラいです、今回の震災で亡くなった方には心よりお悔やみ申し上げます。 (しょうた)
以上がしょうた君の話ですが、松島も夢メッセも浄土ヶ浜も被災していますから、本当にタッチの差で難を逃れたんですね。それから釧路港の名も知らぬお巡りさん、私からも感謝です。しかし、津波が来るのに釧路港でのんびり釣りなんかするなよな(笑)。
しょうた君は紙一重の差で無事でしたが、海沿いに主要な道路が走っていますから、被災し、命を落とした人の中には、おそらくトラックドライバーの方も多いのではないでしょうか。知らないところへ行けるというのは、トラックドライバーという職業の一つの醍醐味だと思いますが、それは知らない土地で被災するリスクがあるということでもあります。
ずっと考えているんですよ、極端なシミュレーションかも知れませんが、もし今回のような事態に遭遇した場合、トラックドライバーは、トラックを捨てて逃げることが出来るかどうかって……。例えば、しょうた君が「夢メッセみやぎ」で搬入の仕事をしていた時に大地震が来たら、彼はどうしたか? あるいは海沿いの道を走っている時に津波警報が出たらどうするか? 今回の震災を機に、そこまで踏み込んで考えてみることも決して無駄なことではないような気がします。 (キャップ)