5月に開催された「ジャパントラックショー」では、非常に驚いた展示があった。それは、日野自動車が単に「プロフィアZ FCV」とだけ予告していた『予冷機能付き高断熱試作保冷バン』である。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
新開発VIPパネルが実現する前代未聞の大型保冷車コンセプト

「プロフィアZ FCV」は、日本初の量産タイプ大型FC(燃料電池)トラックとして、昨年9月から市販を開始したクルマだ。物流用途をメインとする車両総重量25トン車で、重量換算50kgの圧縮水素ガスを用いて発電し、東京-大阪間の片道を燃料無補給で充分走破できる、約650kmの航続距離をもつ。
事実上の一般初公開となった昨年10月の「ジャパンモビリティショー」では、ドライバンボディを架装していたが、今年5月の「ジャパントラックショー」では、『予冷機能付き高断熱試作保冷バン』という上モノを架装していた。この名称は諸元ボードに表記されていたものだが、それをみて興味を覚える人は業界の知識に明るい方だけだろう。しかし、これが実に驚くべき内容だったのだ。
まず、「保冷車(保冷バン)」というのは、荷箱の壁・天井・床・扉に断熱性能を持たせ、庫内(荷室内)の温度を一定に保てるボディを持った温度管理車を指す。保冷車に冷凍機を追加し、より確実な定温性能を備えた温管車を「冷凍車(冷凍バン)」と呼ぶ。大型温管車では、後者の冷凍車が圧倒的に多い。
『予冷機能付き高断熱試作保冷バン』はその名が示す通り、前者の保冷車である。荷箱の六面体すべてを構成するのは、アルミパネルで挟まれた発泡断熱材の内部に、さらに真空断熱層を封入した『VIP』(バキューム・インシュレイテッド・パネル)で、断面は150mmもの厚さをもつ。これは温管車の荷箱スペックとして最強レベルの断熱性能を確保する部材だ。
そして、この試作保冷バンを特異たらしめるのが、『外部電源でのみ作動する予冷専用の冷凍機』を搭載することである。冷凍車の冷凍機は、輸送中に庫内温度を保つためにあるが、試作保冷バンの冷凍機は、出発前に庫内を冷やす(=予冷)ことのみを目的とし、輸送中は作動しない。さらにいえば蓄冷材も使わない。極めて強力な断熱性能によってのみ予冷時の庫内温度を輸送中も保つ、という大胆なアイディアなのだ。

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