商用車の電動化では日本は相当に出遅れた感もあるが、世界の現状はどうなっているのだろうか? ICCT(国際クリーン交通委員会)が欧州・米国・中国の電動大型車の販売台数等をレポートしているので、2024年のゼロ・エミッション商用車の「今」を俯瞰したい。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Daimler Truck AG・東風汽車
図表/International Council on Clean Transportation
各国で異なる大型商用車の「電動化」比率
大型トラックなど商用車の「ゼロ・エミッション」化が世界で進められているが、2024年現在で電動商用車はどれだけ普及したのだろうか?
国際的な非営利調査機関のICCT(国際クリーン交通委員会)が、世界の主要市場(欧州、米国、中国)での大型車のゼロ・エミッション車(ZEV)販売台数に関するレポートを公開しているので、これをベースに商用車の「脱炭素」の現在地として各市場の電動化比率をお伝えしたい。
(ちなみにICCTはフォルクスワーゲンの排ガス不正発覚のきっかけとなった調査などで知られている)
ICCTの定義によるZEVは「燃焼による排出ゼロ」で、バッテリーEV(BEV)、燃料電池車(FCEV)、燃焼エンジンではないパワートレーンで駆動する車両を指し、CO2削減が可能であってもバイオ燃料などはZEVに含まない。
車両の区分だが、中国とEUの「大型車」はGVW3.5トン以上の商用自動車を指しており、3.5トンから12トンのトラックを「中型トラック」、12トン以上を「大型トラック」としている。
いっぽう米国は重量車区分で「クラス4」以上、つまり約6.4トン以上を大型車とする。中型トラックは約6.4トンから約15トンで、それ以上が大型トラックとなる。
バスは主に都市内を走るものを「都市バス」、都市間を走る高速バスを「コーチ」としている。なお、データは欧州が2024年第3四半期までのもの、米国・中国は2024年上半期のものだ。
欧州 – 大型トラックの約1%強
商用車の電動化で世界をリードしているとされる欧州(EU27カ国)は、2024年第3四半期にZEV大型車の販売台数が2900台弱だった。内訳は大型トラックが700台、中小型商用車が1000台、バスが1200台だ。
前期の販売台数が4200台だったので、市場自体が縮小した。販売シェアは4.1%から4.0%に微減だった。これは、ZEVバスのシェアが18%から14%に縮小した影響で、大型トラックでは1.1%から1.2%に、中型トラックでは9.9%から10.4%にやや拡大している。
欧州の主要市場では景気減速からトラック販売台数の減少が顕著で、ドイツでは40%、イタリアでは38%減少した。EU全体では32%の減少で、過去2年間の四半期として最低の販売台数だという。
欧州の大型車市場シェアはメルセデス・ベンツ(20%)、MAN(14%)、イヴェコ(13%)、ボルボ(12%)、スカニア(12%)、DAF(10%)、ルノー(7%)の順で、前年とほとんど変わっていない。
大型車販売台数の75%を占める大型トラックのうち、1.2%に当たる700台がZEVだった。販売台数は前の四半期より25%の減少だが、市場全体が32%縮小しているため、販売比率は拡大した。なお、前年比では42%の増加となり、登録台数も前年を上回るなど、電動化というトレンド自体は継続している。
ZEV大型トラック市場ではボルボがトップメーカーの座を維持したが、市場シェアは43.5%から36%に低下した。ボルボと同グループのルノーがシェア32%で後を追っている。メルセデス・ベンツのシェアが13%で3位だった。また、わずか5カ国(ドイツ、フランス、オランダ、スウェーデン、デンマーク)でZEV大型トラックの販売台数の86%を占めている。
中・小型トラックは販売台数では大型車全体の12%を占め、そのうち10.4%がゼロ・エミッションだった。市場全体が縮小したにも関わらずシェアは増加し、前年同期と比べると販売台数は47%増えた。
また、ゼロ・エミッションの中・小型商用車で長らくトップセラーの地位にあったフォード「Eトランジット」はシェア23%に減少し、トップの座をイヴェコ「eデイリー」(同40%)に譲った。メルセデス・ベンツ(約15%)や三菱ふそう(10%弱)のほか、中国メーカーも一定のシェアを獲得している。
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