フォード・トラックスはカナダのバラード・パワー・システムズと提携し、同社初の燃料電池大型トラックを開発する。参加する欧州連合のプロジェクトを通じて2025年に長距離輸送用の大型トラクタの実証を行なう計画で、プロトタイプの開発が成功すれば量産化も視野に入れている。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Ford Trucks・フルロード編集部
フォードの大型トラックにFCEVバージョン
商用車用の燃料電池システムなどを提供するカナダのバラード・パワー・システムズは、2023年8月3日、フォード・トラックスへの燃料電池システムの供給で基本合意した。
これはフォード・トラックスが同社初の燃料電池電気(FCEV)トラックのプロトタイプを開発するためのもので、バラードは出力120kWの燃料電池「FCムーブXD」2基を2023年中にフォード・トラックスへ届ける予定。
フォードといえば米国の乗用車メーカーのイメージが強いが、かつては欧州を中心に大型商用車も製造していた。1980年代に欧州の商用車部門をイヴェコ(イタリア)に売却したが、90年代にトルコに現地企業(コチ財閥)と合弁の商用車メーカー、フォード・オトサンを設立している。
フォード・トラックスはフォード・オトサンのグローバルブランドであり、フォードグループで唯一の大型商用車専門ブランドだ。輸送用トラクタと、建設用トラック、集配送用の大型トラックなど、総重量16トン以上の商用車を製造しており、特に2019年の「インターナショナル・トラック・オブ・ザ・イヤー」(IToY2019)を受賞したF-MAXは世界的に高い評価を受けた。
本拠地のトルコのほか、事業は欧州・中東・アフリカ・CIS(旧ソビエト連邦の構成国)などに拡大している。
いっぽうバラード・パワー・システムズは、1980年代から燃料電池スタックを開発しているこの分野の老舗企業だ。持続可能な地球のために燃料電池による動力を供給することをビジョンとし、自動車(特にトラック・バスなどの商用車)のほか、列車、船舶、定置発電機にも応用が可能なPEM燃料電池を製造する。
フォード・トラックスがプロトタイプとして開発するのは、長距離輸送用のF-MAXをベースとする連結総重量(GCW)44トン級のFCEVトラクタで、開発・製造ともにトルコで行なう。
2025年に欧州のTen-Tネットワーク(欧州縦断輸送ネットワーク)でデモンストレーションを行なう予定となっており、これは欧州連合(EU)が出資するZEFES(ゼロエミッション貨物輸送エコシステム)プロジェクトの一環だ(フォード・トラックスはZEFESプロジェクトのメンバー)。
また、基本合意書(LOI)によると、このプログラムによるプロトタイプの開発が成功するなどの条件を満たすと、F-MAX燃料電池の量産時にバラードがフォードへのFCシステムの優先サプライヤに指名される。
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