AKB48現象を地で行く「ヒメツルソバ」
「ヒメツルソバ」を初めて見たのは、京都・大原の寂光院だったと思う。池の石垣の隙間にピンク色の小さな丸い花がこぼれるように咲いていて、いかにも晩秋の山里の尼寺にふさわしい花だと思ったものである。それからしばらくして、園芸店で「ポリゴナム」の名でポッド売りされているヒメツルソバを発見。早速ポッドを買い求めて寄せ植えにしたのだが、これが全ての間違いの元だったのである(その理由は後述)。
ヒメツルソバは、ポリゴナムのほかにカンイタドリなどとも呼ばれるヒマラヤ原産のタデ科の植物である。夏場はいったん花が途絶えるものの、春から晩秋までたくさんの花をつけ、その最盛期は、ちょっとオーバーに言っちゃうと、ピンクの絨毯のよう。特徴的なVの字の斑紋が入る葉も、秋には紅葉してきれいだし、暑さと乾燥に強く、病害虫も少ないという、ここまで聞くと園芸品種として理想的な植物に思えるかもしれないけど、ところがぎっちょんちょんなのである。
でも本題にはまだ入らず、もう少し引っ張って書いちゃうのだが、「ヒメツルソバ」は、なぜ「ヒメツルソバ」というのだろうか? ヒメツルソバは漢字で書くと「姫蔓蕎麦」らしいのだが、どう考えても蕎麦とは結びつかないので、調べてみたところ、同じタデ科の植物に「ツルソバ」というものがあって、この植物の白い花が蕎麦の花に似ていることから「ツルソバ」と命名され、その小型の種だから「ヒメツルソバ」と名づけられたようなのだ。ちなみに、ツルソバのツルは蔓のことで、お蕎麦だからツルツルの「ツル」っていうわけではないらしい、何かややこしいけど……。
さて、いよいよ本題である。確かにヒメツルソバのピンクの丸い花は愛らしいけれど、ヒメツルソバの繁殖力、ハンパじゃないんですね。冬に地上の葉や茎が枯死しても、根が残っていて春には新芽を出すし、何よりスゴいのは「こぼれ種」の驚異の生命力です。雨で流されたのか、風で吹き飛ばされたのか、我が家のこぼれ種から発芽したヒメツルソバがご近所で猛威を奮っております。隙間という隙間にこぼれ種が入り込み、すぐに芽を出し、ほふく性なのであっという間に地面いっぱいヒメツルソバだらけ。これじゃいくら何でもじゃまっけです。ご近所の皆さんが舌打ちしながらツルヒメソバを刈り取っているのをみると、本当に申し訳なく思います。はじめはポッド1つに収まっていたのに、今じゃ取り返しがつかないほどあちこちで群落をつくっちゃっているんです。
最初は「可愛い!」「愛らしい!」なんていって鼻の下を伸ばしていたら、いつの間にやら、右を向いても左を見ても、朝から晩までゾロゾロゾロゾロ、この娘たちの顔を見ない日はない、しかも我が国(我が家)だけでなく、他所の国(他所の家)にも同じようなユニットがぞくぞく誕生しているという繁殖力は、ホント、ヒメツルソバとAKB48はそっくりです。「すんごく可愛い!」「超愛らしい!」というんじゃなくて、普通に「可愛い!」「愛らしい!」というのがクセモノなんでしょうね、親しみやすいから「いいよ」「いいね」で心を許していると、知らない間に「とりこ」になっちゃって、もはや取り返しのつかないことに……。依然勢いが衰えず日本を席巻中のヒメツルソバとAKB48、オジさん、深みにハマりそうで、ちょっと怖いです。
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