食べちゃ駄目ですよ!「ヨウシュヤマゴボウ」
雑草もいろいろである。雑草らしく道端の片隅で肩身を狭くして生えているものもあれば、ジワジワ垣根を乗り越え侵食してくるもの、中には雑草のくせにメチャ態度がデカい奴もいる。「な~に言ってやがんでぇ~、雑草なんて草はねえんだ、そっちが勝手に『雑』に分類してるだけの話じゃねえか。あのな、どんな草にだって平等に生える権利はあるんだぜ、それが証拠にお天道様を見てみねぇ、誰にでも分け隔てなくお日様を照らしてくれてるじゃねえか。少しはこちとらのことも勉強してみろってんだ、べらぼうめ」。なんか、この人(人でいいのか?)の言い分にも一理あると思うので、雑草にも少々肩入れしたいと思う。で、態度のデカい雑草といえば、この「ヨウシュヤマゴボウ」も実に態度がデカい。空き地など身近な場所に堂々と生えており、雑草だけど一目置かれる存在である。
ヨウシュヤマゴボウは、かつて「おままごと」の食卓によく登場したので(ままごと遊びにはよくつきあわされたものでした)、昔から割とよく知っていた。ただ、聞き違いをしてジョウシュウヤマゴボウと覚えてしまったので、「へえ~、群馬県が原産地なのかな? ま、群馬なら山が多いから、ヤマゴボウもあるだろう」くらいに思っていたのだが、ずいぶんと大人になって、この誤りに気づいたのである。ただ、気づいたものの、今度は「ヨウシュウヤマゴボウ」と覚えてしまい、「なんだ、中国の揚州が原産地だったのか」と思ったものである。さっきの江戸っ子の雑草の人には悪いけど、世間一般の雑草に対する認識はこんなものである。しかし、これからは心を入れ替えて、「雑」も「純」も分け隔てなく愛情を注ぎ知識を深めていこうと思う。
さて、その「ヨウシュヤマゴボウ」は、漢字で表わせばイッパツですね、「洋種山牛蒡」と書きます。最初からそれを知っていれば、生まれをめぐって「上州か揚州か」「国定忠冶かマダム揚か」みたいなややこしい間違いを二度も犯さずに済んだのにと悔やまれる。「ヨウシュヤマゴボウ」は中国原産の「ヤマゴボウ」の近縁で、こちらは北アメリカ原産だから「洋種」がつくというわけ。ちなみに「ヤマゴボウ」は花や実が直立しているけれど、「ヨウシュヤマゴボウ」は下に垂れているのが最大の違いである。
「ヨウシュヤマゴボウ」は多年草で、毎年赤く太い茎が同じ場所から出てくるので、雑草といっても、年間リザーブシートを持つ雑草界の大物といった風情である。洋酒のリザーブならぬ洋種のリザーブなのである(つまらねェ~!)。最大の特徴は、その黒紫色の実だろう。これから秋にかけて、青い実もどんどん色づくはずで、「ヨウシュヤマゴボウ」に見頃があるとすれば、やはりこれからが「旬」と言っても差し支えないと思う。しかし、いつも思うのだが、「ヨウシュヤマゴボウ」は、「ヤマゴボウ」というより「「ヤマブドウ」といった方が通りがよかったんじゃないだろうか。根は太く長いというからゴボウに似ているのだろうが、やっぱりヤマブドウに似た黒紫の実に最初に目がいくのだから「ヨウシュヤマブドウ」の方がよかったんじゃないか、余計なお世話だが、そんなことを考えちゃうのである。
ところが、である。コレ、駄目ですね。ご存じの方も多いと思うが、ヨウシュヤマゴボウはフィトラッカトキシンなどを含有する毒草で、特に根や葉、さらに実にも毒があるんですね。最悪の場合は死に至ることもあるというから、ヤマブドウなんて名前をつけたら、誤って食べてしまう人が続出したかもしれず、クワバラクワバラである。さらに名前につられて「つい、うっかり」なんてことがないよう、もう一つ続けると、実は、前述の「ヤマゴボウ」にも毒があるのだが、そうすると、「なに言ってるの!? お土産で山ごぼうの漬物、よく貰ったわよ、美味しかったわよ、毒なんかあるはずないじゃないの!」という近所のオバちゃんが出てきて余計ややこしくなるのだが、食用の山ごぼうは、食用のモリアザミや牛蒡の細い根を漬けたもので、ここで言っているヤマゴボウ&ヨウシュヤマゴボウとは全くの別種。名前につられて根を掘り出して食べたりしないようにしなければいけない。ちなみにヨウシュヤマゴボウは、別名アメリカヤマゴボウというそうだが、かつてアメリカではその実をワインの着色料に使っていたというから、知らないこととはいえ恐ろしい。考えてみれば、その昔、おままごとの食卓に並んだヨウシュヤマゴボウの実は、食べる真似だけだったと思うが、少しくらいかじったかもしれず、無知とはいうものはコワいものだと、つくづく思うのである。 (キャップ)