ヨガの先生は手積み手降ろしの達人だった
僕とガミさんがウンウンうなりながら山積みの缶ジュースと格闘している隣で、同じように作業をしている運転手がいた。見たところでは45歳くらいで、真っ黒に日焼けしていてしかもひどくやせているので、何となくインドのヨガの先生のような感じだった。ところが僕たちが2人がかりで積み込むよりも、その運転手のほうが積み込むスピードが早いのである。
僕もガミさんも建材の配送で鍛えている(?)ので、体力には自信があったのだが、その運転手には完敗した。ガミさんが話してくれたところによると、ガミさんと同じように下請けで来ているらしいのだが、彼の場合はもう何年も専属でこの仕事をしているらしいということだった。鼻がとがった感じと日焼けした肌の色、そして何よりもモクモクと働くその仕事ぶりから運転手の間では『鉄人』と呼ばれているのだそうだ。
「こんなところよりももっと割のいい仕事があると思うけどね」と小声で言いながら、ガミさんが「鉄人さん」と声をかけると、ニコッとして手を振ってくれたが、その口元はかなりの『歯欠け』だった。「歯が悪いらしくて、昼飯はいつもウドンなんだ」とガミさんがつけ加えた。
月にロケットが飛ぶという時代に(かなり古い表現ですが……)、10トン以上の荷物を人間の力で積んだり降ろしたりしている、それが当時の運送業界の現場であった。今は、ウイングボディとフォークリフトによる荷役が普及しているが、それでも手積み手降ろしに汗と涙を流している運転手はまだまだ数多くいるはずである。 (山高一浩)