雑誌編集者というのは、タイトルや見出しなどに非常に気を遣う人種である。すなわち、ちょっとの利いた言い回しや多少ひねった文言などを用いて読者の気を引き、その記事を読んでもらおうというのが雑誌編集者の大切な仕事なのである。それはまた、雑誌編集者のイロハであると同時に、その編集者の技量を知る重要なファクターとなるから、ゆめゆめ読者は記事のタイトルや見出しを簡単に読み飛ばしてはならぬ。
さてそこで、いよいよ始まったブログ新連載『トラッカーのための「道草」知っと講座』のタイトルの話である。後段の「知っと講座」は、どうせつまらない語呂合わせだから置くとして、「道草」講座の「道草」とは、一体なにを指すのであろうか? 道草をくっても食べたいその土地その土地の旨いものであろうか? あるいは名所旧跡? はたまた土産物の類いであろうか?
違うんだな、コレが…! ここでいう「道草」とは、その辺の道端に生えている草花や樹々のことで、それらを取り上げてウンチクしていこうというのが、この新連載の狙いなんですね。
「そのまんまやんけ! なんちゅうベタなタイトルや!」
「そんな葉っぱの話なんか全然興味ない、やめとき、やめとき!」……。
優秀な雑誌編集者というのは、ときには読者の「声なき声」が聞こえてしまう人種なので、そんなブーイングの声も耳に届くのですが、やりたかったんだもん、こういうの…。タイトルはベタだけど、ひねって、もう一回ひねったら、そのまんまになっちゃったような…。
だってね、トラックドライバーは、今はほとんどワンマンだから、長距離運転しているときは結構サビしいもんじゃないですか。そんなとき、トラックの狭いキャビンの中で、ひとり無聊をかこちつつ走っていて、通りすがりの道路際で咲いていた、名も無知らぬ花や緑にホッと気持ちが慰められることって、あるでしょ。でしょ、でしょ!
つまり、トラッカーにとって道端に生えている「道草」は、ホントは近しい存在なんだから、その「道草」のことをもうちょっとだけ知ってみるのも一興ではないか、と思うんです。
もちろん、そんなこと知ったって何の得にもならないけれど、行く先々でロンリートラッカーの無聊を慰めてくれる路傍の草花や樹々にも感謝を込め、その名前くらい知っておいても悪くないんじゃないでしょうか? それにね、花の名前を一つ覚えるだけで、何だかちょっと心が豊かになったような気がするはず…。ハイ、タイトルはベタだけど、そんなトラッカーのための「道草」講座、始まり始まり!
オレンジ色のニクい奴「ナガミヒナゲシ」
第1回目にしては、それほど名前が知られていない「道草」の登場ですが、実はこの「ナガミヒナゲシ」、かなりヤバいくらい大ブレーク中です。路肩や中央分離帯にもよく生えているし、特徴的な花色なので、トラックの車窓からもすぐに見つけることができると思います。
でも、これほど目につくようになったのは、ここ5、6年といったところではないでしょうか。オレンジ色の中でも肉色と表したい鮮やかな色の4弁の花弁が印象的で、はじめは園芸種のポピー(ヒナゲシ)の新品種が咲いているのかなと思ったものですが、毎年毎年、今頃の季節になると至るところで目にするようになりました。しかも、去年2~3本咲いていたと思ったら、今年そこは群落を作るほど繁殖しており、この可憐に見える花には恐ろしいほどの生命力が秘められていることが分かります。
実際、ナガミヒナゲシのナガミとは長実のことで、花が咲き終わった後の、いわゆる芥子坊主の中には1000~2000個もの種子入っているそうですから、「大ブレーク」も尤もなことだと思います。花は1日で散りますが、その後にはたくさんの「長実」が残り、見ようによってはちょっと不気味かも…。
ご推察の通り外来の帰化植物で、地中海沿岸や中欧が原産とか。一説には1961年に東京の世田谷で自生が確認されたとありますから、全然関係ない話ですが、ここで借用した「オレンジ色のニクい奴」のキャッチフレーズで知られる夕刊フジの創刊(1969年)や「ひなげしの花」のアグネス・チャンの日本デビュー(1972年)より早かったことになります。
外来種の帰化は、植物だけに限らず、例えばブラックバスやアライグマ、ミドリガメ、外来のカブトムシやクワガタなど多種多様に及んでいますが、さらに時代をさかのぼれば、日本の固有種の方が少なくなってしまうくらい、島国・日本の動植物は「大陸」に侵略されてきた歴史があります。ですから、よほどの害を及ぼさない限り、そう目くじらを立てるべきではないという意見もありますが、やはり全国的に爆発的に繁殖するような事態は、生態系に悪影響を及ぼすでしょうし、ちょっと恐い気がします。
大陸の外来種は、条件が整うと爆発的な繁殖力を見せるのが大きな特徴だと思いますが、このナガミヒナゲシの場合、温暖な地方の都市周辺を中心に繁殖し、特にアルカリ性の土壌を好むので、コンクリートによってアルカリ化した土地などで群生が見られるようです。こんな隙間も、むしろ大好きみたいです。
面白いのは、その場所その場所によって、花の大きさも背丈もずいぶんと異なり、例えば我が社のある品川の八ツ山口付近では、花も小さく背丈も20~㎝と低いですが、我が家のある横浜市郊外では倍くらいの背丈で、花ももう少し見栄えがするような気がします。ちなみにこのナガミヒナゲシは、他のヒナゲシ同様、アヘンの原料とはならないので、その分はご安心を…。
いずれにせよ、このナガミヒナゲシ、一部では行政による駆除も行なわれているようですが、正直言って駆除しても勝ち目はないでしょうね。好むと好まざるにかかわらず、セイタカアワダチソウ並みにポピュラー化する日も近いのではないかと思います。 今が花の盛りですから、「コレがアレか」とご確認いただければ嬉しいです。 (キャップ)