地味テク

地味テク

私は地味な男である。外見も凡庸であるし、性格も至極おとなしい。目立たないというか存在感が希薄というか、先日も知り合いの人と街でばったり遇ったのだが、こちらが挨拶しても怪訝な顔をされ、「えーと、どなたさんでしたっけ?」と聞かれてしまった。こちらは知り合いと思っていたが、先方は記憶にとどめていなかったらしい。むろん、会社や社会でもずいぶんと影が薄い存在である。18年間勤めた以前の会社は、声がデカく態度がデカい人間がデカい面をしてデカいことを言うのを尊ぶ傾向があり、逆に地道にコツコツと仕事をするタイプの人間は疎んじられるという社風があった。しかも、文句を言わない人間にはどんどん仕事を押っつけてくるのがテキの常套手段であるから、真面目で大人しい私など、日の当たる場所・美味しい仕事とは全く無縁で、いつも下っ端扱いでコキ使われてばかりいたのである。

こんな私だから、むろんトラックの技術に関しては、派手な脚光を浴びるハイテクよりも、目立たないけれど着実に進歩しているローテクの方にハゲしく共感を抱くのである。ぽっと出のくせに即スター扱いのハイテクより、下積み時代の苦労が長いローテクの方を応援したくなるのは人情というものであろう。いみじくも、かつて下積み時代にトラックの運転手をしていた山高レポーターが、最新のトラックに乗って「ワーッ、いま浦島の気分!」と感想をもらしたように、今やトラックは、排ガス対策でブラックボックス化しているエンジンをはじめ、ASVやらハイブリッドやらハイテクのオンパレードで、ローテクはお呼びでないかのごとき扱いである。

しかし、と、私は言いたい。しかし、トラック全体で見た場合、その進歩を支えているのはハイテクではなくローテクなのではないか。たゆまぬ基本的な技術開発の積み重ねがトラックの進化を、より良いトラックへの進歩を下支えしているのではないか、と…。

ここでは、ローテクを敢えて地味テクと呼ばせてもらおうと思うのだが、以前、この地味テクの中でも最も地味な部類に属する防錆対策の第一人者であるM氏と話をする機会があった。スパイクタイヤの禁止以降、融雪剤の大量散布が車両の錆腐食を招き問題が顕在化しているのだが、錆に対してユーザーのみならずメーカーもまだまだ無頓着なところがあり、対策が後手後手になっているのが現状である。

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この錆による腐食を食い止める技術に心血を注いでいるのがM氏で、材質・構造・塗装・施工技術に至るまで、極めて地味だけれど錆に打ち克つ戦いを続けているのである。大メーカーにあって、正直言ってラインから外れた部署なのかもしれないが、トラックの防錆対策にここまで一生懸命打ち込んでいる人がいることが涙が出るほど嬉しかったのである。

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こういった地味テクは、架装技術の分野ではさらに重要である。ボディ架装には、ほとんどハイテクは用いられないが、それでもトラックボティが年々進化しているのは、名も無きエンジニア達が日夜コツコツと開発努力を続けているおかげである。決して大向こうを唸らせるような技術ではない、世間の脚光を浴びるような開発でもない。しかし、その歩みが止まれば、文字通り日本のトラックの進歩はない…。暮らしと社会を支える縁の下の力持ちとして、トラックドライバーに熱いエールを寄せるように、私はまた、静かに、しかし熱く地味テクを応援するものである。 (キャップ)

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