バーラトベンツvs純国産Y社16トン車
さて、中型トラック(ICVトラック)編の2台は、ダイムラー・インディア・コマーシャル・ビークル(DICV)のGVW14トン級モデル「バーラトベンツ1415R」と、Y社のGVW16.2トン級モデル(以下Y社16t車)である。今回はバーラトベンツ車から報告しよう。
バーラトベンツのICVトラックは、今回の「1415R」のほかに、GVW10トン級「1015R」、GVW12トン級「1215R」、GVW16.2トン級「1617R」、GVW18.5トン級「1917R」、ダンプ専用GVW12トンモデル「1217C」が設定されている。
大型バーラトベンツ車と同じく、キャブとシャシーは、DICVがインド市場向けとして新たに開発したもの。キャブのプラットフォームが、三菱ふそうの「キャンター(TEモデル)」ベースなので、どうしてもキャンター派生車にみえてしまうが、シャシーは完全な別物で、そのキャブさえ過酷な使用環境に応じて構造が強化されており、実態はなにもかも違うクルマだ。
キャブの室内やインパネのデザインは、どことなくTEキャンターの面影が残るものの、やはり違っている。そこかしこが簡素化されてはいるが、それほど貧相にもみえない。大型バーラトベンツ車と同様にエアコンを装備するが、メーカーオプションのパワーウィンドゥともどもICVトラックでは珍しい装備で、バーラトベンツが目指すインド市場でのポジショニングを端的に表している。
ちなみに、長距離運行で用いられることの多い「1617R」「1917R」では、このTEキャンターベースのキャブの後部を延長、ベッドスペースを新設した、独自の「スリーパーキャブ」も開発されている。
エンジンの源流はふそう
「1415R」に乗り込むと、キャブのパッケージングや窓の形は同じなので、運転席に収まった時のムードは、これまたキャンターを思い起こさせずにはいられない。しかしシフトレバーは、TE/TFキャンターのインパネシフト式ではなくオーソドックスなフロアシフト式、ステアリングホイール(ハンドル)も一世代前のメルセデス・ベンツの大型トラック・バスと似た4本スポーク型で、この辺りの「触感」はガラッと違うものだ。
エンジンは「4D34i」。詳しい方はこの型式でピンとくるかもしれないが、ルーツは三菱ふそう4D34型で、それをDICVが大幅改良した、3.9リッター直4ターボエンジンである。電子制御コモンレール高圧燃料噴射装置(CRS)を搭載し、最高出力148hp・最大トルク460Nmを発生する(「1617R」「1917R」「1217C」用は167hp・520Nm)。
大型編では触れなかったが、BS6適合バーラトベンツ車のエンジンは、ダイムラーや三菱ふそうが、Euro-Ⅵやポストポスト新長期で用いている排ガス対策とは異なるアプローチが採られている。それは、従来のBS4適合エンジンをベースに、新開発のDPF+尿素SCRなどで構成される排ガス後処理装置を組み合わせたもので、つまり大量のEGR(排気再循環)を用いていないピュアSCR方式なのである。
トランスミッションは、ダイムラー/メルセデス・ベンツが開発したシンクロメッシュ付マニュアル6速トランスミッション「G85-6」型で、ふそう系エンジンのパワーを、ベンツ系マニュアルTMで伝達しているわけだ。もとはドイツで生産されていたTMだが、いまはDICVへ移管され、欧州向けを含めて全量がインドで組み立てられている。
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