■カメラのおかげで不安を感じさせない後方視界
室内のトリムカラーは落ち着いたグリーン基調、インパネのスイッチパネル周りはこれまでと同じマットブラックとなる。メータークラスターは12インチのスクリーンに置き換えられ、中央に大きな速度計を配したメイン画面のほか状況に合わせて複数のデザインのメーターを表示可能。
またサイドパネル上部にはナビゲーションやカメラ画像、ドライバーガイド(操作説明やメンテナンス方法)、ロードインジケータ(エアサスの圧力センサーを利用した軸重計)などを表示する9インチのサイドディスプレイが追加された。
一部の機能設定は同画面を見ながらタッチパネルスイッチもしくはステアリングスイッチで行なう。
エンジンを掛け、一回りコンパクトになった運転席左側のI‐シフト操作レバーをA(自動変速)にセット。インパネ上にスイッチが配置された電動パーキングブレーキを解除して走りだす。
右ハンドルでも方向指示器レバーは日本車と逆のステアリングコラムの左側、リターダレバーは右側にあるので最初は注意が必要だ(ハザードスイッチもインパネ上のステアリング右側にある)。
これまで日本仕様のサイドミラーは助手席側のミラーを専用のステーで前方に配置する国産車に準じたレイアウトを採っていたが、新型は左右とも欧州(英国)と共通のドアミラー仕様に改められた。
助手席側のドア窓を介して確認する左側のサイドミラーは、乗用車のドアミラーに似た感覚。視線の移動量が多いのは気になるものの、視野は確保されており、間もなく慣れる。
また、助手席側ドアには国産車のような安全確認窓がないが、方向指示器で左折の合図を出すと自動的に立ち上がる(手動操作で常時表示可能)「パッセンジャーコーナーカメラ」が備わるので、心強い。
これは左ミラーアーム基部に内蔵したカメラの映像をサイドディスプレイに映し出すもの。画角は左斜め前方の直接視界と左ミラーの視野の間を補完する設定で、左折時や車線変更時の安全確認を助ける。
このほか、後退ギアに入れた際も荷箱後面上端部に装着されたリアビューカメラの映像が表示される設定になっていた。同モニターには最大8台までカメラを設定できるという。
日本向けのFHのエンジンは欧州仕様と基本的に共通のD13K型(2777㏄)。排ガス仕様は最新のユーロVIステップD規制対応で、国際基準調和のおかげでそのまま日本の平成28年規制に適合。
馬力仕様はトラクタと同じ460PSと540PSの2種類が用意されるが、6×2駆動の試乗車は460PSのみとなる。トルクは234kgmと、GVW25tの単車カーゴにはいささか過剰な気もするが、国産車にはない馬力帯が必要とされる用途もあるという。
ギアボックスは12段直結のAMT「I‐シフト」(AT2612F型。540PS仕様にはデュアルクラッチ式が組み合わされる)。2.64の減速比を介して後前輪を駆動する。
■パーソナルセッティング機能が付いたVDS
今回は空荷だったため25t車としての走りの実力は不明だが、発進時や加速時には低速トルクの豊かな13リットル級エンジンらしい応答性、力強さが感じられた。やはり排気量は大きいほうが良い。
ロードインジケータによると試乗時のGVWは12.2t。総輪エアサスのおかげで車重が軽くてもバネは堅すぎず、乗り心地が快適に保たれるのも印象的だった。
新型FHには調整機能を備えた第2世代の「ボルボ・ダイナミック・ステアリング」(VDS)が搭載された。
VDSはボルボ独自のステアリング制御機構である。パワーステアリングギアボックスにハンドルと路面側の双方から入力量を検知するセンサーと電動モーターを取り付け、既存の加速度センサーなどの情報と合わせてECUが走行状態を類推。必要に応じてモーターを制御することで、ステアリング操作を支援する。
昨年にはUDトラックスにも技術が展開され「UDアクティブ・ステアリング」(UDAS)としてクオンの一部車型にオプション設定された。
VDSの主な効果は低速時のステアリングの軽さ、高速時の直進安定性向上、不整路でのキックバック軽減、横風に対する操舵補正、ステアリングの自動センタリングの5点。第2世代ではパーソナルセッティング機能が追加され、各要素の制御の強さを調整できるようになった。
操作はサイドディスプレイのタッチパネルで行なう。走行中に直進性とセンタリングの項目を変えてみたところ、最強と最弱の間では明らかな違いが感じられた。基本的にVDSの作動はUDASよりも明確。
以前は低速での操舵力が軽すぎる、センタリングの戻り方が強すぎるといった意見も聞かれたので、調整機能は有用だろう。もちろんデフォルトのセッティングを選ぶことも可能だ。
このほか、アダプティブ・クルーズコントロール(ACC)は全車速対応になり、渋滞時のストップ・ゴーでも機能するようになった。操作用のステアリングスイッチはデザインが改められ、車間距離設定のボタンも使いやすい。
もともとボルボは欧州車らしい優れた直進安定性を備えるが、VDSによって進路はより安定。鬼が金棒を得た印象である。豊かなトルクを発生するエンジン、フラットな乗り心地もあって高速道路の移動は快適そのもの。ずっと走っていたい気持ち良さだった。
【画像ギャラリー】キャビンの快適性はそのまま継承!! 新型ボルボFHリジットの全容をギャラリーでチェック(33枚)画像ギャラリー