ボルボの欧州向け大型車ラインナップは、プレミアムセグメントに属するトップモデルの「FH」と、FHに15.6Lの大排気量エンジンを搭載して重量物運搬や大量高速輸送に対応する「FH16」、カーゴ系汎用モデルの「FM」、そしてオフロード特装用の「FMX」の4車種を主力とする。
このうち日本に正規導入されているのはFHとFMXの2車種で、FMXは道路法に定められている軸重規制などからナンバーの取得はできない。このため日本では構内専用車となり、一般的にはかなり稀有な存在。
そんなFMXは2021年末にモデルチェンジを実施。キャブを一新し居住性の向上、新たな大容量アクスルの設定により積載能力も向上した。あらためてFMXとはどんなトラックなのか解説していこう。
文/フルロード編集部・多賀まりお 写真/フルロード編集部
*2021年12月発売「フルロード」第43号より
【画像ギャラリー】まさに質実剛健! 構内専用トラックのボルボ新型FMXとは?(11枚)画像ギャラリー■屈強なシャシーフレームを備えるFMX
Xはエクストリームを意味するというヘビーデューティな特装用シャシーFMXが日本にも導入されたのは2018年のこと。
欧州大型車の各銘柄にはこうしたオフロードモデルが存在するが、構内専用車ながら日本への正規輸入は恐らくこれが初であった。
2010年にFM系の派生車として誕生した同車は、ハイト300mm・板厚8mmのサイドレール内側に全面補強を施した高剛性フレームを擁し、FM/FH系と共用のサスペンションやパワートレーンを組み合わせる。
現行型FMXのキャブは先代FHの骨格をベースにした実用仕様で、FHと比べフロア高が低く/フロアトンネル高が高いのを特徴とする。
■2021年モデルの変更点
さきごろ、ボルボ・トラックスは欧州向け大型車の主力4車種、FH、FH16、FM、FMXを一挙にモデルチェンジ。これを受け日本に導入されているFH、FMXは昨年11月に2021年モデルとしてキャブの刷新や仕様の変更を行なった。
新型FHをベースに開発された新しいキャブはFMと共用。幅方向は2.5m級だが、フロアトンネル段差はFHの90mmに対して445mmと高く、そのぶん座席前のフロア高が低い。
現行型からの改良点は、まずフロントピラーの角度が起こされて運転席前方の空間を拡大したこと。キャブ容量は800Lも増大して居住性が改善されている。
フロントウインドウの下縁も相対的に下げられて前方視界が向上。ピラー角度の変更とエッジ状に切れ込んだ形状のドアウインドウによってバックミラー周りや斜め前方の視認性も高まっている。
V字型LEDヘッドライトや一回り大きなアイアンマーク、フロントグリルの意匠は新型FHと同じ共通デザインが与えられた。
FMX独自のスチール製パンパーやライトガード(オプション設定に)といったヘビーデューティな装備はこれまで通りだ。
日本向けのキャブ設定はベッドの備わらないショートキャブのみなのは現行型と変わらないが、室内高1640mmの標準ルーフ仕様のほか、全高が約40mmアップした6×4モデルには車高制限のある環境でも使用できるよう、ルーフパネルの膨らみが小さい室内高1480mmのローキャブが追加設定された。
室内も使い勝手が向上したインパネ・スイッチ周り、9インチのサイドディスプレイ、12インチ液晶のメータークラスターの採用など、FHと基本共通の変更が行なわれている。
また同様にパーソナルセッティング機能を備えたVDSも全車標準装備となる。同機能はボルボ独自のステアリング制御技術「VDS」をサイドディスプレイの操作でユーザー好みにセッティングできるようになったもの。
いっぽうパワートレーンは、D13K型エンジンの460PS仕様にAMT「I-シフト」の組み合わせは変わらない。なお欧州向けに設定されるトルクコンバータ式の「パワートロニック」は用意されない。
シャシーの軸配置はこれまでと同じく6×4と8×4の類で、前軸には1軸10tの高許容荷重アクスルを採用。後軸(ハブリダクション式)はタンデムで38tの高耐荷重タイプを新たに設定した。
後者のGVW(車両総重量)は6×4で48t、8×4では58tに及び、積載量を増やして輸送効率を高められると、国内のユーザーからはすでに好評を得ているという。
こうした車型が日本の公道上では最遠軸距離規制と軸重規制によって本来の良さを発揮できないのは少々残念に思う。
【画像ギャラリー】まさに質実剛健! 構内専用トラックのボルボ新型FMXとは?(11枚)画像ギャラリー