元日早々の能登半島地震はとても衝撃的なニュースでした。犠牲になった方々のご冥福をお祈りするとともに、被災した方々の一刻も早い救援を祈念したいと思います。
近頃の日本は、いつどこで災害が起きるかまったく予想がつかず、これはトラックドライバーにとっても深刻な問題です。安全確保が困難な状況下で輸送を強要された場合は、荷主への行政処分もありえますが、しかし、仕事に対する使命感もありますし、画一的な対応ができないのが緊急時というもの。
そんな状況に陥ったらどうしたらいいのでしょうか? 北海道のベテランドライバー・菊地さんに自身の経験を語ってもらいました。
文/ベテランドライバー・菊地さん
写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
*2023年12月発行トラックマガジン「フルロード」第51号より
5年前の胆振東部地震を体験して思うこと
私は北海道在住なので一番直近の災害による危機を感じたのは、やはり2018年の胆振東部地震です。広範囲の停電により燃料の給油ができなくなり、会社に電話をすると、「仕事は全部キャンセルになったから帰社でお願いします」とのこと。帰り道、ラジオで厚真町が甚大な被害を受けたことを知りました。
会社には災害時の行動マニュアルのようなものはありませんが、普段運んでいる荷物が人々の生活に密着するインフラ資材なので、災害復旧に関わる出荷に備え、社員は会社での24時間待機に入りました。
停電はしましたが、幸い電話が不通になることはなく、荷主との連絡に支障もなく、被害状況は3日ほどですべて把握していました。
実は、未だに災害時の行動マニュアルのようなものはありません。何か異常事態が発生すれば、緊急連絡網に書かれている順番に電話をかけたり、メールを使い、指示を受けたり出したりするだけです。
従って、通信インフラ自体が崩壊した場合、私達は各個人が陸の孤島になる可能性があります。残念ながらその対策はありませんので、復旧するまで自宅待機することになっています。
クルマに最低限の備えを
出先でそんな事態に遭遇した場合は、最低限3日分の水と食料、着替え、シュラフ、携帯トイレなどをクルマに常備しておく以外にできることはありません。
他社の仲間たちにも災害時の対策を聞きましたが、やはり臨機応変に対応しながらも、危険を犯してまでの輸送業務は行なわない方針のようです。
自社に燃料の地下タンクがある会社でも、自家発電装置まで装備しているのは稀です。停電はトラックを止め、パソコンをダウンさせ、あらゆる生活の当たり前を奪うものだと痛感しました。
約3日間の停電中、近所で明かりが灯っていた会社はNTTとNTTドコモのビルくらいです。
停電になった時に運行中だったトラックには、会社に戻る燃料が不足している状態の車両もありました。どうしても帰りたいドライバーは被災地から遠く離れた給油可能なスタンドまで数時間走ったようです。
弊社の場合、20トン超えの車両には500リットルタンクを装備していますので、満タンで出発すれば道内の何処へ行っても無給油で戻れます。8トン以下の車両には200リットルタンクしか付いておらず、片道400km以上の仕事では途中の給油が必須になります。
5000cc以上の排気量のエンジンが載るトラックで、道内の何処へ行っても無給油で戻るためには300リットルタンクが必要です。
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