最近はスペアタイヤを搭載しない車両も多くなっていますが、トラックではスペアを搭載するケースがほとんどです。新品のまま一度も使用されずに廃棄されることもあるスペアタイヤの活用方法を、商用車タイヤのプロ・ハマダユキオさんが解説します。
文・写真/ハマダユキオ
ほとんどのトラックはスペアタイヤを搭載
タイヤのトラブル、例えばパンクやバースト時に重宝するのがスペアタイヤです。トラック・バスでは車両装着と同じホイール、タイヤサイズのスペアタイヤが車両に吊り下げられております。
ただ、最近の傾向として排ガス関係の装備や架装状況によりスペアタイヤが搭載されていない車両もあります。規則では、スペア搭載の義務はありませんし、乗用車と同じ流れでスペアタイヤ無しが増えてきております。
道路事情が良くなりパンクの発生も減りました。新車から廃車までスペアタイヤを使わないケースも多く、またトランクスペース、車両の軽量化、製造コスト削減といった意味もあるのでしょう。
さらに、近年はロードサービスも充実しており、クルマのオーナー(ドライバー)自らスペアタイヤへの脱着やパンク修理等を行なう機会も減っています。それでもトラックの場合は、まだスペア搭載の車両が殆どです。
そんなに頻繁に使用するものではなく、数年に一度、もしかしたら一度も使用されないまま破棄されることもあるかもしれません。とは言え、スペアタイヤを搭載しないって言うのは、トラックにとっては、イザという時のリスクが高すぎます。
そんなワケで今回はスペアタイヤについてです。
放置すると腐食が進む
新車納車でスペアタイヤが搭載されているケース。これは間違いなく新品ホイールに新品タイヤが組まれて搭載されていますね。言い方を変えると、新車の購入価格にはスペアタイヤを吊り下げる「スペアキャリア」「ホイール」「タイヤ」の新品価格が含まれているワケです。
納車してすぐにスペアタイヤを使用するシチュエーションっていうのは中々ないもので、そのまま数年が経ち、通常のタイヤ交換時期がきてもスペアタイヤはスルーされ、緊急時に使う機会がなければまた数年……という具合で、新品を購入して一度も使用せずに廃車という事例は、少々勿体無い気がしないでもありません。
もちろんスペアタイヤを使わない状態とは、それまでトラブルが無かった状態なのですから、これはこれで喜ばしい事です。
ただタイヤやホイール、スペアキャリアも時間と共に傷んでいきます。スペアタイヤはほとんどの場合、横向きで車両の下回りに搭載されており、これはホイールに雨水や融雪剤の塩カルを含んだ水などが溜まりやすい状態です。
放置すると錆や腐食の発生でスチールホイールなどは錆のミルフィーユ状態に……。同じくスペアキャリアもチェーンやギアなどが固着してしまいます。酷い物は固着を通り過ぎてチェーンとギアが一体化している感じのモノもあり、下ろそうとするとスペア回しが破損する程です。
いざという時に使えないのであれば、何のためにスペアタイヤを搭載するのかわかりません。腐食を防ぐという観点からも定期的にスペアを使ったり、入れ替えたりするのをお勧めします。
我々タイヤ屋もタイヤ交換やローテーション作業でお任せの場合は、許可は取りますがスペアを絡めての作業をします。緊急時に使い物にならないスペアタイヤを搭載するのは完全な無駄ですし、我々も時間制限のあるシチュエーションで固着番長とのタイマン勝負はしたくありません。
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