母として女としてプロとしてトラックに共に走り続ける! ベテラン平ボディドライバー由美さんの素顔の自叙伝【前編】

妊娠・出産・保育園探し・仕事探し 復帰に立ちはだかる「現実」の壁

 それから2年ほどして身体に異変を感じた。妊娠2カ月……。まさかこんな時に……。嬉しい反面、トラックを降りなければいけないという寂しさがあった。

 子供が産まれたら、もう二度とトラックには乗れないかもしれない。そんな思いもあり、妊娠4カ月目で退職するまでの毎日は、思う存分トラックドライバーという仕事を楽しんで、思い出を作ろうと思った。

 お腹をさすりながら、まだ見ぬ我が子に語りかけ、ドライブを楽しんだ。

 「ママは今、おっきなトラックに荷物を積んで、海の見える道を走ってるよ」「段差でガタガタするね」「このエンジンの音聞こえるかな? 子守歌みたいだね」「ママと一緒にトラックに乗って、いろんなところへ行ったこと、覚えていてね」

 正直、まだまだ未熟な自分が母親になるなんて考えられなかった。しかし、人間の本能とは恐ろしいほど素晴らしい。子を宿した瞬間に、女性は母へと変わるのだ。

 何度も挫折した禁煙も、お腹の子のためにスパッと止めることができた。トラックも……?

 しかし、そうはいかなかった。娘が1歳を過ぎヨチヨチ歩きを始めた頃、無性に仕事が、トラックが恋しくなった。昔からのじっとしていられない性格は、母になっても治まることはなかったのだ。

 1歳の娘を安心して預けられる場所はなかなか見つからなかった。市の保育園はどこも待機児童がいるくらい定員いっぱいで、受け入れてはもらえない。

 それ以前に、保育時間が朝8時から夕方6時までなんて、トラックドライバーの仕事上絶対にムリだ。料金は倍以上高かったが、民間の24時間営業の保育園に娘を預けることにした。

 保育園探しも大変だったが、仕事を探すのがさらに大変だった。求人広告や求人誌でドライバーを募集している運送会社に片っ端から電話した。再び大型車に乗りたいという気持ちもあったが、雇ってくれるなら2トンでも4トンでも、トラックならなんでもよかった。

 「うちは朝早いし、夕方に帰れる仕事はない」「バラ積みだから女性にはムリ」「長距離があるからお子さんがいる方はちょっと……」。

 やんわり断わられるならともかく、「うちは女は雇わないよ!」といきなり言われ、一方的に電話を切られたことも……。

 女であり、また母であることが再就職の障害になることを、はじめて痛感した。

 特に運送業では「女は運転がヘタ」「仕事ができない」「力がない」「子供を理由にすぐ休む」など、まだまだ肩身の狭い思いをしている女性が少なくないのだ。

 ならば私が変えていこうじゃないか。女性トラックドライバーに対する、世間の偏見を……。

 微力かもしれないが、これからトラックドライバーになろうとしている女性や、復帰を目指すママトラッカーのためにも……。そう決意した。

 それからいろいろな運送会社に問い合わせたが、いい返事はもらえず、面接にすらこぎ着けなかった。

 最終手段として出産前に勤務していた会社に電話をかけた。これはあんまりやりたくなかったことだ。

 また働きたいとお願いすれば、「大丈夫だよ、戻っておいでよ」と、お情けで言ってもらえるかもしれないが、人に甘えるのが苦手だしイヤだった。でも、どうしてもトラックに乗りたかった。夢を諦め切れずにいた。

 思い切って電話をすると、案の定、所長からよい返事がもらえた。最近2トン車で印刷工場専属の配送に新規参入し、これからあと2台増車する予定とのこと。

 「その仕事なら印刷工場に朝8時前に入ればいいし、夜も6時には終わるし、ちょうどいいんじゃないか?」

 所長の問いに躊躇するはずもなく、私は「はい、ぜひお願いします! 印刷物は得意ですし、頑張ります!!」と答えた。私の忙しい日々が再び始まった。

(後編に続く)

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