長野潤一のトラッカーズアイ 全車速追従クルーズのスーパーグレート・トラクタに試乗

長野潤一のトラッカーズアイ 全車速追従クルーズのスーパーグレート・トラクタに試乗

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9月に発表された新型スーパーグレート・トラクタに栃木県の三菱ふそう喜連川研究所で試乗してきた。単車系のフルモデルチェンジが5月にあったばかりであるから、トラクタは意外に早いデビューとなった。

自動停止・自動発進するプロキシミティーを体験

新型スーパーグレート・トラクタの目玉は、何といってもアダプティブ・クルーズコントロール機能を進化させた「プロキシミティー・コントロール・アシスト」。先行発売のスーパーグレート単車系にも搭載されている。従来の国産トラックの車間クルーズは、低速になるとオートクルーズ機能がキャンセルされ、ドライバーが自ら速度調節を行なう必要があった。しかし、プロキシミティーは自動停止・自動発進までをカバーする。

車間距離は5段階の設定が可能。停止時間が2秒以上続くと、前車が発進しても停止状態がキープされ、再発進にはアクセルを踏む必要がある。ただ、アクセルを軽く踏んでやると、すぐに元の設定に復帰し、自動的に速度を調節し始める。スバルの「アイサイト」のようなこのシステムは、もちろんトラックでは初めての体験、しかも40フィートの海コンを引っ張ったトレーラ。何とも不思議な感覚であった。

10.7ℓエンジンでトレーラを引っ張る

新型スーパーグレート・トラクタの進化は、エンジンとトランスミッションにも見られる。驚いたのは、トラクタなのに単車系と同じ10.7ℓの6R20型ダウンサイジングエンジンを搭載している点だ。この6R20は、ダイムラーグループの世界戦略基幹エンジンである。2軸トラクタには428馬力と460馬力、さらに7.7ℓの6S10型が用意される。

海コンなどの用途ではGCW(連結総重量)40t程度をけん引する力が日常的に要求される。従来のトラクタは13ℓ級のエンジンだったのに、馬力やトルクは大丈夫なのか?

試乗車は428馬力で、40フィートの海コンに9tのウェイトが積んであり、GCWは約25t程度と余裕があったが、13ℓ車と遜色ない……というよりは、充分な運動性能が確認できた。小排気量でも高出力・高トルクを確保している秘密は、高過給で気筒内に充分な燃料を送ることと、軸受けなど基本部分の強度をしっかり設計していることにあるという。回転数やギア比は変えていないとのこと。このダウンサイジングで約170kgの軽量化に成功している。

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(ダウンサイジングの10.7ℓの6R20エンジンは、引っ張ることなく従来の13ℓ級エンジンと同等の出力を発揮。回転数もギア比も変えていない)

トランスミッションは全車12AMT「ShiftPilot(シフトパイロット)」で、単車系と同様、もはやマニュアル・トランスミッションの設定は無い。国産の中でも変速が滑らかだった従来の「INOMAT(イノマット)-Ⅱ」がさらに進化し、一層滑らかに……。「クラッチを切りました」、「クラッチを繋ぎました」というような感覚は無く、継続的にトラクションが伝わるため、40tを引っ張ってもキャビンがシャクられることはないだろう。

左コラムの「マルチファンクションレバー」にはパドルシフトも備わるため、シフトアップ・シフトダウンも好きなタイミングで行なえるのだが、さらにアクセルペダルにシフトダウン・スイッチというのが組み込まれており、再加速などの際はベタ踏みからさらに一段奥に踏み込んでやることにより、シフトダウンして加速する。また、シフトパイロットにはクリープ機能もあるため、ホーム付けなどの微速調整に役立つ。

試乗やブリーフィングを通じて三菱ふそうの技術者が強調していたことは、「新型スーパーグレートは徹底してドライバーの負担を減らしました。ドライバーの疲労を軽減すること、それが事故の防止に繋がります」ということだった。

 

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(左コラムの「マルチファンクションレバー」にはパドルシフトも付いているが、アクセルペダルにもシフトダウン・スイッチを備える)

新型スーパーグレート・トラクタのその他の特徴

●衝突被害軽減ブレーキ:ABA4/AMB Plus

●キャブ塗装を内製化:365色が選択可能で、主要運送会社のコーポレートカラーにも対応

●純正カプラをメーカーオプション設定:ヨースト製・ソーシン製から選択可、納期短縮

●400ℓ燃料タンクを標準装備

●タイヤ空気圧監視システム(TPMS)を標準装備

●流体式リターダをオプション設定 ←コレはお勧め!

●単車系に装備される「アクティブ・サイドガード・アシスト」(左折時の巻き込み防止)は、トレーラでは車長か変わるため搭載見送り

●「トラックコネクト」は車両と三菱ふそうのサーバーを通信で結び、車両データを一括管理。オイル交換時期などの管理を的確に行なえる。スマホで車両点検を行なえるアプリも近日公開予定。

 

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(キャブ塗装は365色が選択可能で、主要運送会社のコーポレートカラーにも対応)

試乗車スペック:スーパーグレート・トラクタ

車両型式:2RG-FP74HDR3YKVB

グレードライン:プロ

全長:5,685mm

全幅:2,490mm

全高:3,615mm

ホイールベース:3,250mm

車両重量:7,000kg

車両総重量:18,610 kg

第五輪荷重:11,500 kg

カプラオフセット:685mm

乗車定員:2名

許容GCW:45,460 kg (4×WD)

エンジン型式:6R20(T3)

総排気量:10.7ℓ

最高出力(ネット):315kW(428ps)/1,600rpm

最大トルク(ネット):2,100Nm(214kgf・m)/1,100rpm

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