ダカールラリーのトラック部門に挑み続ける日野自動車が擁する「日野チームスガワラ」は10月初旬、神奈川県厚木市の人の森・華厳工場の採石場にて、ダカールラリー2026参戦車「HINO600シリーズ」の走行試験を実施した。
走行試験を行なったのは来年1月にサウジアラビアで開催予定のダカールラリー2026に向け、開発が進められてきたニューマシン。走行データ収集を目的に行なわれたテスト走行では、改良点の検証に加え、チーム体制の強化が図られた。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
実戦さながらの国内最終テスト

日野チームは、9月末に完成したばかりのニューマシン「HINO600シリーズ」のテストを9月30日から茨城県の日野自動車・御前山テストコースで行なってきたが、10月4日、5日にかけサウジアラビアへ出発前の国内最終テストを人の森・華厳工場の採石場で実施した。
今年で3年目を迎えた華厳工場でのテストは、日野チームとってダカールラリーに近いタフなオフロード環境で走れる貴重な機会となっている。
テスト走行ではチーム代表兼ドライバーの菅原照仁がハンドルを握り、ニューマシンの感触を確かめたほか走行データを収集し、改良点などの検証を行なった。
また、毎年新規採用している販売会社メカニックの訓練もあわせて実施。大会中にスペアパーツや整備工具、キャンプ用品などを運ぶサポートトラック「HINO700シリーズ」も持ち込み、本番さながらに夜間の整備トレーニングが行なわれた。

トラブル対策と性能向上を図った新型車両
今年1月に開催された「ダカールラリー2025」では、トランスファーのトラブルが相次ぎ、リタイアの危機に見舞われたものの、チームの総合力で乗り切り、トラック部門総合13位(全44台中)で完走。前人未到の34年連続完走記録を更新した。
同大会、ステージ9で発生した致命的なトラブルは、ジャンプ着地時に左前側トルクロッドが外れ、アクスル→プロペラシャフト経由で過大な力が伝わりトランスファーケースを破損させたことが原因だった。
この対策として今回のニューマシンでは、トルクロッド径の拡大による強度アップと、ブッシュ部の留め具を外れにくい構造ものに改良。さらにプロペラシャフトの伸縮幅を広げ、衝撃吸収性を高めている。
またサスペンションもセッティングが見直され、1つのタイヤ当たりリーフスプリングとショックアブソーバー付きコイルスプリング2本という構成は踏襲しつつ、リーフ・コイルともにバネレートを下げることで、悪路での路面追従性を向上させた。
いっぽうパワートレーン面では、A09C型エンジンには変わりがないが、ターボのウェストゲートの排気流路を見直すことで無駄な熱が発生するのを抑制。その結果空気が入りやすくなり最大出力は816PSから828PSへ向上した。また最大トルク値は据え置きながらも、低速域でのトルク特性も改善しているという。
ダカールラリーの開催地サウジアラビアまでは、航路で約2カ月を要するため、採石場での走行試験を終えた参戦車およびサポートトラックは、調整を経てすぐに出航しなければならない。
現地到着後は、12月に同国で開催される前哨戦「ジェッダラリー」でダカールラリー本番に向けた最終調整が行なわれる予定だ。
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