価格以外のメリットも大きいコンバージョンEVトラック
——では、この価格設定以外のメリットはどうか?
価格設定以外のメリットを整理してお伝えすると、
1.新車EVに比較して短納期である(新車8カ月〜1年に対して3週間程度)
2.部品点数が減り、特に故障リスクの多い部品が電動化されることで維持経費が下がる
3.非改造部分は従来のままで、荷台など架装部分も継続して使用できる
4.廃車同然のトラックや故障車がEVとして甦る
といったことが挙げられます。
いっぽうデメリットとして考えられるのは、
1.ベース車両の程度が悪い場合に新車代替しないことで非改造部分に故障リスクが残る(1年車検制度による点検整備が故障リスクを防ぐが……)
2.最新の安全装備や先進装備が装着されない
といった点になると思います。
——コンバージョンに際して改造する項目はどこになるのだろうか? また、改造作業はどう行なうのだろうか?
日本の改造認証ルールでは、改造に際して届出が必要な項目は、「車枠及び車体」「原動機」「動力伝達装置」「走行装置」「操縦装置」「制動装置」「緩衝装置」「連結装置」「燃料装置」「電気装置」……であると規定されています。
今回のEVコンバージョンキットは、新しいアイテムを数多く投入するのではなく、まずは第一弾製品として「いかに改造項目を少なく抑えるか」を主眼に開発を行ないました。その結果、届出項目としては以上の10項目のうち4項目が改造申請を要する項目となっています。逆に言えば、それ以外の部分には改造や改変を行なっておりません。
改造作業の実際ですが、エンジン/トランスミッションを取り外してEV部品に換装しますので、作業者は指定工場である必要があります。私どもが推奨します整備会社に車両を入庫して頂き、まずは改造前に車両側の点検・整備を行ないます。
私どもはEVコンバージョンキットに5年10万kmの保証をお付けしますので、車両側もそれに見合うレベルまで整備・点検、必要であれば修理を行ないます。
私どものEVコンバージョンキットは「完全ボルトオン方式」となっており、改造前の部品取り外しから改造完了までを3日で行なえます(作業者2名、1日8時間作業の前提。整備工場によって若干異なります)。
車両の完成後は、各陸運事務局に持ち込み、車検を受験、ナンバーを取得してお客様にお渡しする流れになります。
キャンター1.5tのEVコンバージョンキットは、量産を前提とした「複数台改造認証」を既に取得しておりますので、車検場予約がスムーズであれば、申請から車検取得まで2週間強で手続きを完了できます。
すなわち、トータルで3週間程度という短納期で、稼働中のディーゼルトラックをEV化して現場に戻すことができるということになります。
——ベース車両は使用過程のキャンター1.5t積とのことだが、これ以外の車種にも対応する予定はあるか?
年内にキャンター2t/3t積までEV改造キットの適用拡大を行ないます。キャンター以外の車種(いすゞエルフ、日野デュトロ、トヨタダイナ等)につきましては、商談台数がある程度まとまった時点で開発し発売する計画です。
キャンター1.5t用のEVコンバージョンキットは非常にコンパクトに設計されており、汎用性が高い構成になっております。また、まだ具体的には申せませんが、小型トラック以外の商用車向けEVコンバージョンキットも開発し、2026年度以降に順次投入してゆく計画です。ちなみにヤマトモビリティの目標としまして、2025年度に700台の改造受注を目指しております。
——コンバージョンに使用する使用過程のトラックの走行距離(もしくは稼働年数)の目安はどうか? またSBSの通常の代替サイクルはどれくらいか?
EVコンバージョンに供される中古トラックの走行距離や稼働年数につきましては、客先により実にまちまちです。私どもとしましては、何らかの形で新車メーカーの保証が残っている車両につきましては、現時点ではEVコンバージョンをお勧めしておりません。この視点で、現時点では「2016年モデルより古いキャンター」を対象とさせて頂いています。
SBS様の車両の使われ方につきましてはコメントを控えさせて頂きますが、第一段階でEVコンバージョンの打診を頂いておりますキャンターは2012年モデルが多く、走行距離は10万kmを上回る車両が多いようにお見受けしております。
——SBSホールディングス関連の会社以外にも販売する予定があるのか? その場合、どういったユーザーを想定しているか?
キャンター1.5tのEVコンバージョンをSBS様と共同で進めて参りましたので、この製品の市販開始までは常にSBS様を第一に考えておりました。市販段階に入って以降は、SBS様からも「他社への拡販OK」とのご快諾を頂いておりますので、今後は他社様にも積極的にアプローチしてゆくつもりです。
ただ、改造車であることを考慮し、千差万別があります小口一般のお客様に広く販売することは想定しておりません。きめ細やかな商品改良やサービスをご提供するためにも、同一モデルをある程度以上の台数で保有され、同様な使用環境でお使いの大手物流企業様への拡販を第一に考えております。
——現在は関東中心の販売展開ということだが、いずれは全国規模の販売網やサービス網の展開も視野に入れているのか?
SBSグループ様向けのEVコンバージョンキットの取り付けは、まずは神奈川県相模原市の整備会社様と合同で行なう予定です。関東圏での販路拡大に伴い、契約生産拠点もお客様の使用エリアも加味しながら増加させていくつもりです。関東以外の地域につきましては、現在、関西圏への事業進出を準備中です。
ただ、全国的な販売ネットワークを築くといったことは考えておりません。販売の形態としては、リース会社さんと連携をしたり、あるいは直販の場合だったら代理店さんを通じて販売するといったいろいろなやり方があると思いますが、我々が新たに販売網を構築するということはないと思います。
また、整備に関しても同様です。各物流会社さんは自前の整備工場や協力会社をお持ちだと思います。EVコンバージョンは2人の作業員がいれば、2日半か3日でコンバージョンができてしまうので、我々が工場を構えるまでもなく、物流会社さんの協力工場でお客様が使っていた中古トラックをベースにEV化していただく。そういうロジックになりますので、お客様も我々も余計なコストは掛けないというのが大前提になります。
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