フルトレーラや構内車が居並ぶ異色の整備工場! 大型車のメッカにリニューアルオープンしたUDトラックス鹿島カスタマーセンターはなかなかスゴい

予防整備にテレマティクスを積極的に活用 

 今日のトラックの整備といえば、主流は予防整備である。そのために活用されるのがテレマティクスだ。この活用状況はどうだろう?
 
 「はい、テレマティクスを活用して、お客様の車両状態を常に把握しています。万が一トラブルが発生した場合は、遠隔故障診断を行なってメカニックと事前に情報共有し、車両を迅速に通常状態に戻すためのサポートを行ないます。

 ちなみにUDトラックスのコールセンターは、GPS機能を活用して、お客様の車両の位置情報を瞬時に把握。土地勘のない場所でのトラブルにもお客様に安心をお届けすることができます」。
 
 最近増えている故障、減ってきている故障についてはどうだろう?
 
 「最近はトラックの電子制御が高度化したことに伴い、電子制御関係のシステムチェックや修理に関する案件が増加しています。その反面、エアサスやディスクブレーキの普及により置き換わりとなるスプリング交換やブレーキライニングの交換が減少していますね」。
 
 では、鹿島CCならではの入庫車両の特徴や整備内容はどうだろう?
 
 「やはり特殊な用途を持った車両や構内車が多くなっています。先ほども申しましたが、突発的な修理による入庫車両は、他の高速道路インター沿いにある拠点に比べると比較的少なくなっています。

 地域の産業に伴い、飼料や木材、鋼材等の運搬が多く、トレーラやフルトレーラといった連結車両が多いですね。さらに構内車や重トレーラ等も多いため、他地域のUD拠点に比べるとVOLVO車の台数が多くなっています。

入庫待ちの構内搬送用のボルボ。左はレア物のへビーデューティ特装モデルのFMX6×4だ(日本では公道が走れない構内専用モデルとしてラインナップ)。構内搬送車は公道を走れないので、台車に載せて運ばれてくるという
入庫待ちの構内搬送用のボルボ。左はレア物のへビーデューティ特装モデルのFMX6×4だ(日本では公道が走れない構内専用モデルとしてラインナップ)。構内搬送車は公道を走れないので、台車に載せて運ばれてくるという

 この地域の車両を整備する際の特徴としては、海に近く塩害による錆や腐食が酷い車両が多いため、ボルト類が回らなかったり折れてしまったりするなど、ネジ穴を補修する作業が発生する事例が多く見られます。

 自家整備をやっている企業さんもありますが、電子制御に関する法令の改正があったことにより、自家整備工場からこれらの技術対応に関する問い合わせなどが多くなっています。架装物については、基本的に架装を専業にしている整備工場へ依頼していますが、簡単な修理であればこちらで修理することもあります」。

働く人にもやさしい新しい整備工場を目指して

 トラックドライバー不足が深刻化しているが、昨今はトラックの稼働を支える整備士もなり手が少なく、懸念されている。この点はどうだろう?
 
 「確かに年々日本人の若者の人数が減ってきており、採用がむずかしくなっています。私どもでも外国人メカニックを採用していますが、近年増えている外国人メカニックの場合、コミュニケーションなどのフォローが必要だと考えています。また、職場環境の改善に関しては、設備や道具の更新、休憩時間の設定等に気をつけています」。
 
 UDトラックスでは、販売会社のスタッフに対する指導・教育は、本社にある上尾トレーニングセンターに加え、各地域にもトレーニングセンターを置き、新製品、整備方法、装置に関するトレーニングを継続的に実施しているという。

 また特筆されるのは、全世界のディーラーが参加するアフターサービスの技術競技会「UD現場チャレンジ」で、メカニック、フロント、部品スタッフが1つのチームとなり、互いに切磋琢磨して、ユーザーの車両の稼働をサポートするための知識と技術を高めあっていることだ。

 現場にフォーカスしたこのイベントは、2014年から隔年で開催されるが、2020年はコロナ禍で中止となったものの、つい先日4年ぶりに「現場チャレンジ2022ワールドファイナル」が開催され話題を集めた。
 
 その現場チャレンジでも、メカニック、フロントマン、部品スタッフがワンチームとなってカスタマーサービスに取り組むことが強調されているが、中でもフロントマンの仕事は、クルマではなく接客がメインの仕事。接客マニュアルのようなものはあるのだろうか?

 「ただ、乗用車のように不特定多数のお客様に対する接客ではなく、特定少数のお客様に対する接客が基本ですので、一人一人のお客様との信頼関係などの人間関係が重要になると思っています。そのため他業種のような接客マニュアル的なものや定形的な接客トレーニングは導入していません。いっぽうで請求や納品に係る業務や書面の記載内容は均一化や統一化、明確化を進めています」。
 
 最近流行りのメンテナンスリースについてはどうだろうか?

 「メンテナンスリースの場合、契約内容に含まれていない修理はお客様の別途負担となる場合もあるので、丁寧な対応と説明が必要になります。

 UDが主体となってメンテナンス契約を進める場合、定期交換部品については契約に含めるスタンスでお客様に提案していますが、お客様の都合もありケースバイケースとなりがちですね」。
 
 出張サービスや24時間サービスの体制はどうか?

 「関東地域全体の取り組みとして、休日と夜間は外注対応しており、日中についても入庫中の車両整備をきちんと行なうことが重要であると考え、出張サービスの一部を外注委託しています。

 また、UDトラックスでは24時間サービスとしているのはロードサポートの対応のみで、前述したように休日と夜間は外注に対応を依頼しており、工場を開ける等の対応はしていません」。

 整備士不足が喧伝される中で、アウトソーシングできるところはアウトソーシングし、スタッフの労働環境の改善を図る……、そういった姿勢が見える。

 そのいっぽうでサービスの質や迅速性が損なわれることは避けなければならないので、UDトラックスではDX(デジタルトランスフォーメーション)も積極的に推し進めている。

 これは、設計・生産・販売・アフター間で同じプラットフォームを活用して情報を共有するなど、より生産性の高いシステムを導入することにより、顧客へ提供するサービス品質の向上および迅速化を図ろうというものだ。
 
 トラックなどの大型整備は、かつては3Kとも称されてきたが、いまその現場は大きく変わろうとしている。鹿島CCにはそんな新しい時代のカスタマーサービスの姿を垣間見せてくれた。

【画像ギャラリー】鹿島臨海工業地帯にオープンした鹿島CCの最新設備をギャラリーでチェック!!(9枚)画像ギャラリー

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