スカニアにとってバッテリーEV(BEV)による輸送が持続可能な輸送に向けた中心戦略であることに変わりはないが、他の技術や組み合わせについても常に模索を続けている。
顧客とのコラボレーションを通じて実運行環境で新技術を検証する同社の「パイロット・パートナー」プログラムにより燃料電池トラックを試験しており、1000kmの航続距離を確認したという。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/SCANIA CV AB・ASKO NORGE AS
スカニアの燃料電池トラック
スカニアはトラックの電動化に全力で取り組んでいる。ただし、同社の新しい研究イニシアチブが示しているように、持続可能な輸送を実現するために、別の手段への理解を深めるための努力も続けている。
2025年11月始め、スカニアはスイスのベルンで開催された「トランスポートCH」で、長年のパートナーであり持続可能な輸送のリーダーであるASKO Norge AS(ノルウェー)とのコラボレーションを発表した。
水素燃料電池トラックを実運行を通じて試験し、技術的なパフォーマンスや実用性、商用化の可能性などについて評価するというものだ。車両は市販車ではなく、もちろん注文することもできないが、このコラボはスカニアの「パイロット・パートナー」プログラムの一部だ。
これは、スカニアと同社の顧客が日常業務においてさまざまな新技術を評価し、化石燃料を使用しない輸送にどのような貢献が可能か調べることを目的としている。
パイロット・パートナーを率いるスカニアのトニー・サンドベリ氏は「実際の輸送環境で試験を行なうことで、最も効果的な技術は何なのか、そしてどうやって進歩を加速させるべきなのか学ぶことができます」と説明している。
水素車両を試験していることは、スカニアの脱炭素戦略の変更を意味するものではない。依然として電気による直接駆動がスカニアの中心にある。
今回の試験もパイロット・パートナーを通じて実施されている複数の試験の内の一つであり、様々なエネルギーキャリアとパワートレーンの性能を把握することを目的とするものだ。こうした試験を通じて、BEV以外の技術や燃料が実運行においてどのような長所と短所を持っているのか把握する狙いがある。
パイロット・パートナーで1000kmの航続距離を確認
スカニアの電動パワートレーン技術には実績があり、これを水素システムと組み合わせることで、燃料補給1回あたり最大1000kmという航続距離を達成することを初期の試験結果から確認したという。排出されるのは水(水蒸気)だけだ。
両社のパートナーシップは持続可能な輸送を推進するための好例だといい、ASKOのヨルン・アービド・エンドレセンCEOは「スカニアのパイロット・パートナーに参加することで弊社の業務に適した持続可能ソリューションの開発をテストし、そこに影響を与えるというユニークな機会が得られます」と話している。
また、サンドベリ氏は「アスコの力強いコミットメントと積極的なアプローチは移行を加速させる鍵となります。両社の協力を通じて、パイロットから得られる洞察を、業界全体に利益をもたらす実践的な知識に変えていきます」と付け加えている。
スカニア・パイロット・パートナー・イニシアチブは2021年に創設されたもので、イノベーションのために顧客とのコラボレーションを行なうものだ。このプログラムを通じて、スカニアが重視しているBEVから、レンジエクステンダー、水素燃料電池など、幅広い技術と手法を評価・試験している。
実運用を通じた試験は単なるテストではなく、持続可能な輸送ソリューションを評価・改良するための実践的な学習プラットフォームになるといい、運行効率やTCOの改善にも貴重な洞察を与える。
「ここは、イノベーション(革新)とアプリケーション(応用)が融合する場所です。お客様と緊密に連携することで先駆的なプロジェクトを前進させ、持続可能な輸送システムへの移行を先導するというスカニアの役割を強化します」。(サンドベリ氏)
【画像ギャラリー】スカニアの燃料電池トラックとASKOのスカニア車(4枚)画像ギャラリー





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