長大化を加速させる欧州のトレーラ最新事情に迫る!

長大化を加速させる欧州のトレーラ最新事情に迫る!

 トラックドライバー不足や高齢化が深刻化するなか、トラック輸送の省力化を促進するため2019年に本格導入された長大トレーラが「ダブル連結トラック」だ。

 ダブル連結トラックは、フルトレーラの連結全長を従来の21mから最大で25mまで緩和し、1セットで大型トラック2台分の輸送力を実現するもので、現在は連結全長23~25mの車両が、大手路線事業者を中心に日本全国で運行されている。

 このダブル連結トラックが参考としたのが欧州の大型コンビネーション車両「LHV(Longer Heavier Vehicle)」だが、その欧州ではLHVよりさらに大型のコンビネーション車両「HCT(High Capacity Transport)」が実用化されようとしており注目だ。

 最初に実用化を果たしたのは、大型コンビネーション車両で30年以上の実績を持つ北欧のフィンランド。同国では2019年に連結全長34.5m、連結車両総重量(GCW)76tのHCTが正式に認可された。また、スウェーデンも2030年までにHCTを普及させるべく法制化を進めているところだ。

文/緒方五郎&「フルロード」編集部
※2019年12月10日発売「フルロード」第35号より

【画像ギャラリー】この長大さは圧巻!! 白夜の国からやってきた『HCT(High Capacity Transport)』に注目!!


■欧州は「ダブル連結トレーラ」がほしい!?

ボルボFH6×2/4トラクタに3軸リンクセミトレーラ、3軸セミトレーラを組み合わせたオランダのLHV。リンクセミトレーラは、セミトレーラの多重連結することを前提としたもので、後部に第5輪(カプラ)を備える。単体でも走行できるよう、ボディをスライドさせる機構などを搭載する場合もある
ボルボFH6×2/4トラクタに3軸リンクセミトレーラ、3軸セミトレーラを組み合わせたオランダのLHV。リンクセミトレーラは、セミトレーラの多重連結することを前提としたもので、後部に第5輪(カプラ)を備える。単体でも走行できるよう、ボディをスライドさせる機構などを搭載する場合もある

 欧州の連結車は、セミトレーラで連結全長16.5m(一部17.8m)と連結車両総重量(GCW)40t(一部44t)、フルトレーラで連結全長18.75mとGCW40t(一部44t)が上限とされている。

 ただ、フィンランドとスウェーデンでは30年以上前から連結全長25.25m、GCW60tのLHVが認可されており、2010年代にはオランダ、デンマーク、ノルウェーでもLHVが運行開始。ドイツでも2017年に連結全長25.25m、GCW40tもしくは44tのLHVが認可されるなど、トレーラの大型化が進んでいる。

 欧州でも日本と同様に荷物の増加やCO2排出量削減、ドライバー不足といった課題が深刻化しており、対応が課題となっている。そんななか、LHVをさらに大型化した大型コンビネーション車両実用化の動きが出ている。それがHCTだ。

欧州最大手トレーラメーカーであるドイツのシュミッツ・カーゴブルが2019年に開発したHCT実証実験車両がこの「エコデュオ」だ。既存の3軸カーテンサイダーセミトレーラ2台を、第5輪を備える2軸コンバータドーリで連結するもので、連結全長は31.5mとなっている
欧州最大手トレーラメーカーであるドイツのシュミッツ・カーゴブルが2019年に開発したHCT実証実験車両がこの「エコデュオ」だ。既存の3軸カーテンサイダーセミトレーラ2台を、第5輪を備える2軸コンバータドーリで連結するもので、連結全長は31.5mとなっている

 HCTは、連結全長31.5m以上かつGCW60t以上でセミトレーラ2台分の輸送力を誇り、CO2排出量はセミトレーラより27%少ないうえ、ドライバー不足解消にも寄与。HCT実用化の波は北欧から始まり、現在は欧州全体に波及しようとしている。

次ページは : ■2030年に連結全長34.5mのHCTを目指す 大型コンビネーション車両先進国のスウェーデン

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