商用車をよりスマートかつ安全に! 三菱ふそうとREEオートがバイワイヤ・SDV技術の共同開発で基本合意

商用車をよりスマートかつ安全に! 三菱ふそうとREEオートがバイワイヤ・SDV技術の共同開発で基本合意

 三菱ふそうトラック・バスとイスラエルのREEオートモーティブは、モジュール式車両プラットフォームにおけるバイワイヤ・SDV技術の可能性を共同で探索・検証することで基本合意した。

 1年以内に「eキャンター」ベースの実証車両を共同製作し、次世代商用車の安全性、モジュール性・設計自由度、操作性の向上および低コスト化を目指すという。

 2019年の東京モーターショーに出展されていた日野自動車とREEの共同開発車「フラットフォーマー」を覚えている人も多いと思うが、米国で初めてフル・バイワイヤ車両のFMVSS(米国の自動車安全基準)認証を取得した同社は、「競合せず、補完せよ」という理念のもとメーカーに技術をライセンス提供し、ニーズに合わせた車両開発を支援している。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/三菱ふそうトラック・バス

ふそうとREEオートモーティブがバイワイヤ・SDV技術を共同開発へ

商用車をよりスマートかつ安全に! 三菱ふそうとREEオートがバイワイヤ・SDV技術の共同開発で基本合意
REEの「P7」プラットフォームとふそうの「eキャンター」

 三菱ふそうトラック・バス(以下、MFTBC)は、イスラエルに本社を置く REE Automotive Ltd. (以下 REE)と、MFTBCの商用車における「X-by-wire」(バイワイヤ)およびSDV(ソフトウェア定義車両)技術の共同開発および実証に関する基本合意書を締結した。

 バイワイヤ技術は、従来の機械的な接続を電子制御に置き換え、ステアリングやブレーキ、アクセルなど主要機能の操作をセンサーと電気信号によって行なう仕組みで、車両の安全性や操作性の向上に加え、車両の軽量化や燃費効率の向上に寄与するほか、先進運転支援・自動運転技術の開発への貢献が見込まれている。

 SDVは、主にソフトウェアを通じて車両の機能や性能を制御・更新できる次世代の車両アーキテクチャを指している。ハードウェアに依存せず、OTA(Over-the-air の略で、無線通信によって車両のソフトウェアを遠隔で更新・修正・改善する技術)による機能追加や改善によって、車両の柔軟性・拡張性の向上や車両寿命の延長が見込まれる。

 また、SDVは商用車ではとりわけ重視される総保有コスト(TCO : Total Cost of Ownership)を低減し、顧客に長期的価値を提供することにつながると期待されている。

 2025年11月18日の発表によると、MFTBCとREEはバイワイヤ・SDV技術の掛け合わせの探索・検証に着手したという。

 両社はこの協業を通じて、エンドユーザーのコストを削減すると同時に、車両の最適なモジュール式構造と高度な設計自由度、優れた操作性やより高度な安全機能を実現する、次世代商用車の新たな可能性を探索する。

実証車両を1年以内に共同製作

商用車をよりスマートかつ安全に! 三菱ふそうとREEオートがバイワイヤ・SDV技術の共同開発で基本合意
両社はeキャンターをベースに、バイワイヤ・SDV技術を掛け合わせる実証車両を1年以内に共同製作する

 今回の協業の一環として、MFTBCとREEは共同で実証車両1台を1年以内に製作する予定だ。。

 実証車両はMFTBCの電気小型トラック「eCanter」現行モデルをベースに、REEのEV向けシャシ「P7-C」の技術を盛り込み製作する。同時に、さらに将来の技術的協業に向けた潜在的なパートナー候補として、MFTBCはREEの技術の評価を継続する。

 MFTBCは2017年に国内初の量産型電気小型トラック「eCanter」を発売し、2019年には大型トラック「スーパーグレート」で国内商用車初のSAEレベル2相当の自動運転機能を市場投入するなど、商用車の先進技術開発に先駆的に取り組んできた。

 本協業ではそれらの知見をもとに、さらに将来の技術開発の加速を狙う。

 「競合せず、補完せよ」という理念のもと、OEMやテクノロジー企業に技術をライセンス提供しているREEは、本協業において電子制御ユニット(ECU)、OTAによるソフトウェアの更新、そしてSDVプラットフォームの知見を提供する。

 同社の「REEcorner」技術は、ステアリングやブレーキ、サスペンション、駆動システムなど主要な車両機能を各ホイールハウス内にモジュール化した「ゾーンアーキテクチャ」を特徴とし、車両設計の自由度を飛躍的に向上させた。

 さらに、クラウドサービス「REEai」によって、遠隔でのデータ最適化、予防整備、包括的なフリート管理も可能となっている。

 MFTBC副社長・開発本部長の安藤寛信氏は「三菱ふそうの自動運転・ZEV技術と、REEのバイワイヤ・SDV技術を組み合わせることで、より優れた物流ソリューションを実現できると信じています。REEとともに、地球温暖化、交通事故、ドライバー不足等の社会課題の解消に取り組めることを大変嬉しく思っております」と話している。

 いっぽうREEの共同創業者・CEOであるダニエル・バレル氏は「MFTBCの経験豊富なチームと、よりスマートかつ安全な次世代の商用車に向けた志を共有し、協業できることを大変うれしく、光栄に思います。SDV技術は、お客様の課題を解決するための次世代商用車の開発を加速させるとともに、OTAによる更新によって継続的な機能改善を可能にします。私たちの協業によって、自動運転技術を支えるSDV商用車の新たなベンチマークを打ち立てていけると確信しています」とコメントしている。

【画像ギャラリー】ふそう「eキャンター」とREEの「P7」プラットフォーム(9枚)画像ギャラリー

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