港湾内の「構内輸送」を無人トラックで!? 欧州基準に適合したターミナルトラクタの運行が始まる

港湾内の「構内輸送」を無人トラックで!? 欧州基準に適合したターミナルトラクタの運行が始まる

 欧州で港湾内のコンテナの移動に自動運転トラックを活用する取り組みが進んでいる。EU指令に基づく認証を取得したフェルンライドのターミナルトラクタが、エストニアで無人運行を開始した。

 物流の無人化に関する「実証」は世界各地で進められているが、商用化を進めるには公的な基準に適合し安全性が保障される必要がある。第三者機関による適合性評価を通過した同社の自動運転システムは、そのための第一歩になるかもしれない。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/FERNRIDE

エストニアで「構内輸送」の無人化が始まる

港湾内の「構内輸送」を無人トラックで!? 欧州基準に適合したターミナルトラクタの運行が始まる
タリン近郊のHHLA TKエストニアに導入された3台の無人ターミナルトラクタ

 物流分野での自動運転の実用化に向けて欧州が動き出している。2025年7月10日、エストニアの首都・タリン近郊にある物流ターミナル、HHLA TKエストニアで、欧州指令に基づく認証を取得したヤードトラックの無人運行開始が発表された。

 ヤードトラック(あるいは「ターミナルトラクタ」、「シャンター」などとも呼ばれる)は港湾や物流ターミナルなどの構内でコンテナ(シャーシ)を移動するための専用けん引車。

 コンテナの構内輸送(横持ち)は、円滑な物流のために必要な作業ではあるが売上には繋がらないため、歩合給が多い海コンドライバーなどからは敬遠されがちな仕事だ。構内輸送が無人化されるとドライバーは配送に専念できるため、歓迎されるかもしれない。

 車両はオランダのテルベルク製のヤードトラックにフェルンライド(ドイツ)の自動運転システムを搭載したもので、物流ターミナルを運営するHHLA社とともに港湾物流における安全性と効率性の新たな基準を確立することを目指している。

 ドライバーを乗せない無人運行は、フェルンライドの安全コンセプトとシステムが第三者認証機関のテュフズード(ドイツ)による認証を取得するとともに、エストニアの運輸当局による承認を得て開始された。

 なおこの認証は、テュフズードによるEU機械指令(2006/42/EC)に基づく「自動運転ターミナルトラクタ」の認証としては初めてのものとなり、フェルンライドの自動運転プラットフォーム(車両、センサー、コンピュータ、ソフトウェアを含む)が安全性、サイバーセキュリティ、システム信頼性に関してEUが定める公的な基準を満たしていることを第三者機関が保障している。

無人トラクタは事業展開を目指すフェーズに?

港湾内の「構内輸送」を無人トラックで!? 欧州基準に適合したターミナルトラクタの運行が始まる
港湾・物流ターミナルの生産性向上のため、HHLAとフェルンライドは2023年からパートナーシップを結んでいる

 第三者機関による適合性評価は、EUの基準に適合していることを示す「CEマーク」を表示するための要件となっており、メーカー等による「実証実験」を超えて事業展開を進めるための重要な一歩だ。

 フェルンライドの共同創業者でCEOのヘンドリック・クラマー氏は次のように話している。

「これはフェルンライドだけでなく、物流の自動化を目指す欧州のすべての業界にとって記念すべき瞬間です。私たちは創業当初から安全性を重視してきました。厳格な欧州の基準を満たすには多くの努力が必要でしたが、この道のりにおけるチームの献身と細やかな取り組みを非常に誇りに思っています。

 欧州で認証を得たことで、私たちの技術が理論だけでなく実践においても最高の安全基準を満たしていることが証明されました。EU全域で自動運転による物流を商用化することに一歩近づきました」。

 また、HHLA TKエストニアのCEOを務めるリーア・シッラーベ氏は次のように話している。

「物流ターミナルの構内輸送を無人で行なうフェーズに入り、物流業界のデジタル化は新たな段階に移ります。これは弊社とフェルンライドの協力関係だけでなく、業界全体にとって大きな意味を持っています。ターミナルの無人化に踏み込んだ最初の事業者として、私たちはよりインテリジェントな物流を形作って行きます。

 イノベーションには実務のノウハウを取り入れることが不可欠だと考えており、従業員の積極的なエンゲージメントは、この技術を日常業務に統合する上での基盤となります」。

 いっぽう、テュフズードで機械安全性部門を率いるベネディクト・プルバー氏は次のようにコメントしている。

「フェルンライドは港湾での特定用途における自動運転トラックでテュフズードの認証を取得した最初の企業です。物流ターミナルで自動運転トラックを運行するために、安全性とコンプライアンスの新たなベンチマークを確立することに繋がる、画期的な出来事です」。

 フェルンライドとHHLAは2023年1月からパートナーシップを結んでいる。物流ターミナルの生産性向上のため、自動運転ヤードトラックをシームレスに本番環境に移行することを目指し、緊密に連携してきた。

 両社は安全のためのドライバーを乗せずに運行することに重点を置いており、HHLA TKエストニアにおいてフェルンライドの自動運転トラックを段階的に導入する。現在、ターミナルで稼働するフェルンライドのトラクタは3台だ。

 また、フェルンライドは完全無人運転への移行に向けて現場の従業員を訓練するため、体系的なロールアウトシナリオと標準的な手続きを導入したという。

【画像ギャラリー】エストニアの港湾で活躍するフェルンライドの自動運転ターミナルトラクタ(6枚)画像ギャラリー

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