「2024年問題」解消に新幹線が名乗り!? 荷物輸送の「はこビュン」で車両基地間輸送のトライアル実施へ!

「2024年問題」解消に新幹線が名乗り!? 荷物輸送の「はこビュン」で車両基地間輸送のトライアル実施へ!

 JR東日本は新幹線による荷物の多量輸送の事業化を目指し、車両基地間で「はこビュン」の輸送トライアルを実施する。速さと定時性と安定した運行で世界的に評価される日本の新幹線は、新たな物流インフラになるのだろうか?

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/写真AC(トビラ写真)・東日本旅客鉄道・ジェイアール東日本物流・フルロード編集部

新幹線で車両基地間輸送

「2024年問題」解消に新幹線が名乗り!? 荷物輸送の「はこビュン」で車両基地間輸送のトライアル実施へ!
「はこビュン」のロゴ。2023年8月31日に新幹線による車両基地間輸送のトライアルを行なう

 東日本旅客鉄道(JR東日本)とジェイアール東日本物流(JR物流)は2023年8月9日、新幹線で荷物を運ぶ「はこビュン」による車両基地間の輸送トライアルを実施すると発表した。新幹線による多量輸送を事業化し、新たな物流インフラの構築を目指す。

 はこビュンは速達性・定時性に優れ、環境にも優しいという鉄道の強みを活かし、JR東日本グループが新幹線や特急列車を利用して展開している荷物の輸送サービスだ。

 JR東日本は新幹線による荷物輸送を2017年から行なっているが、2021年にサービス名称をはこビュンに決定し、事業化を目指したトライアルを実施している。

 JR東日本やJR物流が鉄道による高速・多量荷物輸送に取り組む背景には、「物流の2024年問題」や「CO2排出量削減」、「地方創生」等の社会的な課題がある。

 その解決を目的に2023年6月に1回目のトライアルを実施し、8月31日に今年度2回目となるトライアルを実施する。1回目のトライアルでは旅客営業列車を使用したが、今回は上越新幹線の臨時列車(12両編成)に荷物のみを積載するほか、駅ではなく車両基地間での輸送を行なう。

 車両基地を使用するのは、駅のホームでは荷扱いに必要なスペースや時間を確保できないためだ。また、フォークリフトやターレットトラックなど基地内の既存機材を活用することで、荷扱いの省力化の検証する

 新潟新幹線車両センターと都内の東京新幹線車両センターでの積み下ろしにより、前回トライアルを上回る、上り約700箱、下り約100箱の計800箱程度の積み込みを予定し、来年度以降の事業化を目指し今後も継続的にトライアルを実施する。

トライアルの概要

「2024年問題」解消に新幹線が名乗り!? 荷物輸送の「はこビュン」で車両基地間輸送のトライアル実施へ!
トライアルの輸送イメージ。車両基地間の臨時列車で上下合わせて約800箱の荷物を輸送する

 はこビュンによる車両基地間の輸送トライアルの概要は次の通りだ。荷物輸送のための臨時列車であり、一般座席販売は行なわない。

実 施 日 : 2023年8月31日(木)
輸送列車 : 上越新幹線 臨時列車(12両編成)
輸送区間 :
(上り列車) 新潟新幹線車両センター 9:31発 → 東京新幹線車両センター 11:56着
(下り列車) 東京新幹線車両センター 16:32発 → 新潟駅 18:48着
荷物搭載 :
(上り列車)7~10号車(計4両)
(下り列車)9~10号車(計2両)
輸送商品 :
(上り列車)鮮魚、青果、菓子、酒類、生花、精密機器部品等 約700箱
(下り列車)医療用医薬品、雑貨等 約100箱

 なお、一部商品は途中駅で積み込み等も行なう予定となっている。荷主はJR東日本商事のほか、日通、佐川急便、ヤマト運輸など8社。

 従来のトライアルと比較すると、今回は車両基地での荷扱いとなるため、駅ホームでの作業と比べて搬出入、積み卸し、荷捌きのためのスペースや時間を充分に確保できる。また、下り方面への輸送も実施するため、東京での積み込みも行なう。

 事業化に向けて、車両基地内にある既存の機材を活用するほか、生花等の背が高い荷物を客室で輸送する際に対応が可能な新型シッパーを試用するなど、荷扱いでの生産性向上を図る。新幹線車両基地を活用した多量輸送のトライアルは、2023年度中に引き続き予定している。


 陸上での貨物輸送をトラックと比較した場合、輸送距離が長いほど鉄道が優位になるとされ、トラック以外の輸送手段を活用する「モーダルシフト」の必要性はずいぶん前から指摘されている。

 しかし国内の陸上貨物のおよそ9割をトラックが運んでおり、日本のトラック依存は変わらないどころか、むしろ高まっている。これが「物流の2024年問題」を深刻化させる一因ともなっている。

 米国や欧州もトラックへの依存度が高いとはいえ、長距離輸送を中心に鉄道も活躍している。とりわけ欧州は陸上輸送の5~6割がトラック輸送で、欧州域内の国際輸送などで鉄道の利用が進んでいるが、貨物列車の柔軟な運行や国境を超える際の手続きの簡素化、鉄道によるジャスト・イン・タイム輸送の実現など、更なる鉄道の活用が提案されている。

 欧州は、鉄道貨物の取り扱いが増えることで鉄道インフラの利用率が向上し、旅客運送におけるサービスキャパシティも増加するとしている。そのために重要なのは鉄道が運送会社にとって利用しやすく、トラック以上に魅力的な選択肢となることだという。

 人手不足や働き方改革が課題となっている日本の運送会社にとっても、トラック以外の安定した輸送手段の確保は重要だ。旅客鉄道では世界的にも評価が高い新幹線を物流インフラとして活用するJR東日本の取組は、トラック業界からも歓迎されそうだ。

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