ボルボは北米市場の地場輸送用大型トラック「ボルボVNR」の全面刷新を発表した。長距離輸送用の「VNL」に続けてボルボの新プラットフォームを採用し、燃費効率、安全性、汎用性を向上した。
標準搭載するD13型ディーゼルエンジンの改良などで燃費を7.5%改善したほか、未来の駆動技術となるバッテリーEVや燃料電池、水素燃焼エンジンにも対応可能とする。さらに、新しい電気・電子アーキテクチャや安全機能などトラックの「完全自動運転」を実現する上でベースとなる機能も導入されている。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/AB Volvo
ボルボが北米向けの「VNR」をフルモデルチェンジ
北米の大型トラックはボンネット型が主流で、キャブオーバーエンジン(COE)車が主流の日本や欧州とは異なる独特の市場を形成している。ボルボトラックスは2025年3月11日、その北米市場向けの地場輸送用大型トラック「ボルボVNR」の全面刷新を発表した。
新型VNRは現行モデルの設計の90%を見直したといい、新しい効率化技術や空力特性などが導入され、燃料消費量とCO2排出量を7.5%削減した。
長距離輸送用の新型「ボルボVNL」は2024年はじめに発表されており、ボルボの北米向け新プラットフォームを採用するトラックとしては、これに続く2番目のモデルだ。
新プラットフォームは「未来の駆動技術」全般に対応可能としたことが特徴で、バッテリーEV(BEV)や燃料電池EV(FCEV)、さらに水素燃焼エンジンをはじめとする再生可能燃料による内燃機関など、あらゆる技術に対応できるように設計されている。
また、この世代では駆動系のみならず、新しい24ボルト電気・電子アーキテクチャとアクティブ・セーフティ機能が導入された。これらは完全自動運転トラックの商用化を実現する上で標準的な機能として活用されることが期待されている。
ボルボトラックスノースアメリカの社長を務めるピーター・ヴォーホーブ氏は次のようにコメントしている。
「新型ボルボVNRは地場輸送や都市部の配送など要求の多い仕事のために設計されています。他にない汎用性と安全機能、優れたコネクティビティ、そして燃費効率の向上など、ボルボVNRは私たちの品質とイノベーションに対する試金石となります。
長距離輸送用のフラッグシップであるVNLと、スマートな地場輸送用モデルであるVNRにより、弊社のトラックは運送事業者の幅広いニーズに応えます」。
新型VNRの特徴
燃費効率の改善
新型VNRでボルボは燃料消費量とCO2排出量をさらに削減した。これは空力改善とパワートレーンの革新、それに「エコロール」技術などによって達成したものだ(エコロールは下り坂などで適切な時間だけドライブラインを切り離し、トラックを「転がす」ことでエネルギーを節約する技術)。
これにより全体で7.5%の燃費向上を果たし、そのうちパワートレーン単体での燃費向上は、3%分に相当するそうだ。新型VNRはVGT(可変ジオメトリターボ)を採用する次世代のD13型ディーゼルエンジンを標準搭載する。
なおVGTは可動式のベーンにより排気ガスの流量・流速を制御することで幅広いエンジン回転数でパフォーマンスの最適化を可能にするターボチャージャーで、ターボラグの低減や低速トルクの改善といった効果もあり、現在の大型ディーゼル車では主流となっている。

革新的な安全性
新型VNRには前方の衝突警報、自動緊急ブレーキ、車線逸脱警報などを含む「ボルボ アクティブ・ドライバー・アシスト」が搭載され、さらに運転席/助手席側の両方に搭載可能なキャブマウントのサイドカーテンエアバッグなど新しい安全機能も備える。
地場輸送は歩行者の多い市街地を走行する機会が多く、長距離輸送より高度な安全機能と視認性が求められる。
従来型の大型ミラーも残されているが(法規対応の意味もあるようだ)、より小型のカメラモニターシステムが統合された。カメラによる映像がドライバーの死角をカバーする優れた視認性をもたらし、安全運転をサポートする。
汎用性とカスタマイズ
また、VNRの刷新に当たって重視されたのが「汎用性」だという。北米市場の長距離輸送は完全にトレーラ化されているため、長距離はほぼ6×4トラクタの一択となるが、地場輸送用には様々な構成が必要とされる。
新型VNRのアクスル構成は4×2、6×2、6×4などが利用可能で、機動性に優れたVNR300から、中・長距離にも適したVNR660まで様々なバリエーションを用意する。
新型ボルボVNRは米国バージニア州のニューリバーバレー工場で製造され、今後数カ月以内に販売を開始する。
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