電気自動車(EV)用バッテリーで世界最大手のCATLこと寧徳時代新能源科技(中国)は、純電動商用車向けバッテリー「天行」シリーズに、大型トラック用モデルを設定した。
「超充版」、「長寿命版」、「長続航版」、「高強度版」があり、このうち長続航版の電池容量が初めて1000kWh=1MWh(メガワット時)に達するなど、商用車電動化のボトルネックを打破したという。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/寧徳時代新能源科技
BEV商用車向けの「天行」バッテリーに大型トラック用のモデルを追加
2024年11月25日、電気自動車用バッテリーで世界最大手となっている中国の寧徳時代新能源科技(CATL)は、商用車向けの「天行」シリーズから大型商用車用バッテリーを発売した。航続距離や充電速度などバッテリーEV(BEV)トラックのボトルネックを打破し、商用車の電動化は新たな時代に突入するという。
「脱炭素」を背景に大型車の電動化が世界的に進められるいっぽうで、その限界もますます顕著になっている。
BEVトラックの「限界」は、その多くがバッテリーの性能によって決まっている。つまり航続距離や寿命、充電時間といったディーゼル車に劣る部分は、現在のバッテリー性能の限界によってもたらされている。商用車の脱炭素を進めるためにはこうした問題の解決が重要だ。
自動車用バッテリーで世界最大の企業となったCATLは、2024年7月に商用車向けのブランドとして「天行」シリーズを発表、また9月にドイツで開催された商用車ショー「IAA2024」では、その海外向けブランドと思われる「TECTRANS」を発表していた。
商用車向けにフルシナリオのソリューションを提供するとしている同社にとって、大型トラック向けのバッテリーは最後の空白地帯で、これで小型商用車・バスから大型トラックまで商用車全体のカバーを達成した。
大型トラック向けの天行バッテリーは、4C高速充電が可能な「超充版」、充放電による寿命への影響を軽減した「長寿命版」、大容量の「長続航版」、堅牢性を高めた「高強度版」を設定するようだ。
4バージョンの大型トラック用バッテリー
「超充版」バッテリーは、4C充電を120万kmまで維持するという。電池の充放電性能を示すCレートは、1時間で充電可能な性能を「1C」としており、「2C」なら同30分だ。「4C」は15分で70%充電が可能な性能を表している。容量は600kWhで航続可能距離は500km、地場・短距離輸送など稼働率が高く、頻繁な充電が必要な用途に適する。
「長寿命版」は充放電によるバッテリーの劣化を抑え、バッテリー寿命を15年・300万kmまで伸ばしたもの。中距離輸送やエネルギー消費の多い重量物輸送などに適しているほか、バッテリー交換式(中国では「換電式」という)トラックにも対応し、そうした技術が利用できるシナリオでは車両コストをさらに削減可能になる。
「長続航版」では市販のトラック用バッテリーとしては恐らく世界で初めて1000kWh(=1メガワット時)という容量を超えた。航続距離は800kmに達し、BEVトラックによる長距離輸送を実現する。エネルギー密度も業界最高水準の1kgあたり220Whとなり、バッテリーの重量や搭載スペースによる積載量減少を抑えた。
「高強度版」は強度を高めたもので、鉱山用トラックの走行条件下で50万kmを走行可能だという。IP68規格の防水性能や腐食に耐える外装コーティングなど独自の「泰山アーキテクチャ」を採用している。
EV用バッテリーでCATLの世界シェアは4割に達するとされ、中国メーカーのほか、日本や欧米のメーカーにもバッテリーを供給している。今年、スカニアなどにバッテリーを供給していたノースボルト(スウェーデン)が破綻した際はCATLが買収するのではないかと噂された(同社は否定)。
商用車向けのバッテリー事業を強化しているCATLが、BEV大型トラックの新時代に向けて進化を続けている。
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