韓国の起亜が日本市場から撤退して久しいが、この度、電動商用車の「PBV」シリーズで日本市場に再参入することが発表された。PBVは2024年1月のCES(世界最大のテクノロジー見本市)で初めてコンセプトが公開されたもので、「車両を超えたプラットフォーム」として自由度の高いレイアウトが特徴。
日本市場は今後普及が見込まれるミドルクラスのEVバンのラインナップが少なく、市場の拡大と独自性の高い商品需要が期待できることから参入を決めたという。大手商社の双日が販売総代理店となり2026年春ごろに全国で販売を開始する予定だ。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Kia Corporation・Sojitz Corporation
起亜が「PBV」商用車で2026年に日本市場に再参入
韓国のKia(起亜自動車)は2024年9月24日、電動バン「PBV」シリーズを2026年初めに日本で発売開始すると発表した。
起亜はかつてはマツダのトラック(「タイタン」や「ボンゴ」など)をノックダウン生産しており日本にも進出していたが、1999年に現代自動車の傘下となり、2013年に「起亜ジャパン」を清算して以来の日本市場への再参入となる。
そのPBVは「プラットフォーム・ビヨンド・ビークル」(車両を超えたプラットフォーム)の略で、これまでモーターショーなどを通じてコンセプトが公開されていた。同社にとって日本市場への参入は、PBVによる世界戦略の柱になるという。
今では乗用車のメーカーというイメージが強いKiaだが、2024年1月に米国で開催されたテクノロジー見本市「CES」でコンセプトモデルとしてPBVを展示、また6月の釜山モビリティショー(韓国)や、9月にドイツで開催された世界最大の商用車ショー「IAAトランスポーテーション」でもPBVを展示するなど、純電動のバン型商用車を世界展開する可能性を示唆していた。
Kiaは日本市場のニーズに合わせてPBVシリーズの一連のモデルを開発する。最初にローンチするのは「PV5」で、2026年の初め(春ごろ)になる。CESで初めて外装コンセプトが公開された同車は、日本市場の様々な商流に適したスケーラビリティを備える中型電動バンになるという。
また、現地企業とのパートナーシップによりPBVのエコシステムを構築することも計画の一部となっており、PV5に続いて大型バンの「PV7」も日本市場で発売する。
KiaのシニアVPでPBVビジネス部門を統括するキム・サンダ氏は次のようにコメントしている。
「PBVの発売開始とともに、Kiaの日本市場への参入に伴いお客様中心の価値を提供できることを楽しみにしています。私たちはPBVをベースに、それぞれの市場特性に合わせたさまざまなソリューションを継続的に導入し、日本のお客様の需要を満たしてまいります」。
今後のモビリティショーで体験可能に?
KiaのPBVトータル・モビリティ・ソリューションは、目的に合わせた電気自動車(EV)と現代自動車の「ソフトウェア定義型」戦略(SDx)を組み合わせたものだ。
PBVプラットフォームはユーザーのニーズに合わせた、極めて高い自由度を提供するといい、例えばシートのレイアウト、貨物スペースの形状、ドアオプション、バッテリー容量なども自由に設定できる。
名前の通り「車両を超えたプラットフォーム」として、既存のビジネスにおいてはコスト競争力を強化し、専用設計のソリューションにより顧客にさらに大きな価値を提供する。また、優れた自由度と柔軟性をもたらす先進的でカスタマイズ可能なインテリアにより車内の空間という概念を再定義することで新しい事業への扉も開くという。
いっぽう、PBVのエコシステムと顧客のニーズを効率的に適合させるため、Kiaと大手総合商社の双日が戦略提携することも発表された。輸送からインフラまでグローバルにビジネス展開する双日は、日本国内におけるKiaの販売総代理店として理想的な立場にあるそうだ。
グローバルなPBVの需要を満たすため、Kiaは韓国に最先端の「EVO工場」を建設しているが、この工場はKia初のPBV EV専用の施設となる。
なお、PBVシリーズの販売開始に先立ち、KiaはPBVのモデルとエコシステムをモビリティショーで展示し、この技術を直接体験する機会を設けることにしており、国内のショーなどを通じて詳細が明らかになりそうだ。
PBV公式サイトによると、PV5のラインナップは「パッセンジャー」と「カーゴ」の2種類。
タクシーやハイヤー事業を想定する「PV5パッセンジャー」は全長4700mm、全幅1900mm、全高1900mmで、ホイールベースは3000mm。配送事業や施設管理車などを想定する「PV5カーゴ」には「ロング」と「ハイルーフ」があり、ハイルーフの全高は2200mmとなっている(その他の寸法はパッセンジャーと同じ。なお市販車では寸法等の仕様は変更される場合がある)。
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