プロジェクトは自動運転ソリューションの基礎となる?
MANトラック&バスのR&D担当執行役員、フレデリック・ゾーム博士は次のようにコメントしている。
「自動運転システムを開発するにあたって、私たちは当初から実際の貨物輸送に応用可能なことと、お客様にとって利益があることを重視しています。ANITAプロジェクトで、単にコンテナターミナルでの自動運転トラックを開発することに留まらず、この技術を輸送プロセスの一部として業務に組み込んだのはこのためです。
こうした方法でなければ、将来の自動運転トラックを真に意味のある方法で活用することはできないでしょう。すなわち、安全性を向上し、とりわけドライバー不足という問題に対して優れた柔軟性を発揮し、他の輸送機関との連携が容易で、もちろん実運用でエネルギー効率を改善することです。これらは電動化とともに非常に重要になっているのです。
MANにとってANITAプロジェクトは、2030年以降にウルムの輸送拠点に導入を予定している、一連の自動運転トラックによるソリューションの基礎として重要なものです」。
安全のためのセーフティ・ドライバーと開発エンジニアを乗せた実証実験を通じて、自動運転技術の継続的な改良と、こうした計画に関する包括的な洞察を得るだけでなく、コンテナターミナルに新技術を導入する場合に必要な準備についても知見が得られたという。
DBの貨物鉄道部門・DBカーゴの役員で、財務管理・サプライマネジメントを担当するマルチナ・ニーマン氏は、次のように話した。
「異なる輸送手段を連携させる複合輸送は、間違いなく今後、成長を続ける分野ですし、そこでは環境にやさしい鉄道が重要な役割を果たすはずです。貨物鉄道のコンテナターミナルの業務は複雑で、もっと効率化しなければなりません。
これを実現するために、私たちはプロセスの自動化とデジタル化を進める必要があります。本日完了したANITAプロジェクトは、鉄道の貨物ターミナルの未来がどのようなものになるのかを示しています。そこで働く自動運転トラックは、未来の複合輸送の実現可能性を左右することになりそうです」。
異なるシステムを連携する「共通言語」が必要
ANITAプロジェクトにおいて、自動運転トラックがコンテナを扱えるようにするため、トラックがデポやターミナルのインフラとコミュニケーションを行なえるようにする必要があった。
そのためフレゼニウス応用科学大学の研究者が既存の業務プロセスを分析し、人と機械それぞれの手順と動作から、一連のデジタル化されたルールを作ることが最初のフェーズとなった。
デオン・デジタル社のコントラクト仕様言語(CSL=Contract Specification Language)が関係するシステムの連携における共通言語となり、車両とインフラシステム間のリンクを確立した。
このソリューションは、様々な言語を話せる通訳のようなもので、ヘテロジニアスな異種のシステムに共通する言語を使って、自動運転トラックとコンテナの取り扱いをガイドする。
同大学で複雑系システムを研究するクリスティアン・T・ハース教授は次のように説明する。
「ここにあるのは、コミュニケーション集約型のマルチエージェントシステムです。つまり、トラックドライバー、クレーンのオペレータ、フォークリフトの運転手などが、それぞれに異なる言語で話しているという状況です。
それぞれの主体は様々な言語やジェスチャーを使ってコミュニケーションを行なっていますが、その過程で関連すると思われる情報は相手にも伝えなければなりません。
自動化された輸送では、配車係と会話するのはドライバーではなく、データベースを備えたトラックやその他の機械です。そのために機械が理解できる言語による、デジタル化されたコミュニケーションシステムを開発する必要がありました。
これには高度な努力を要しましたが、生産性向上という成功につながったと思います」。
また、ゲッティンクKGはオブジェクトの位置と環境の検出に関する専門知識を提供した。同社のハンス・ヘンリック・ゲッティンク氏は「無人の車両は(有人の自動運転車より)魅力的で、さらに広い範囲・速度域での障害物検知に取り組んでいます」と述べ、将来的に他の物流ハブなどへの展開も目指していることを明らかにした。
MANのロードマップによると、ANITAプロジェクトによるレベル4自動運転の実証後は、公道を使った物流ハブ間輸送でレベル4自動運転を実用化し、その後数年以内にレベル5の無人運転を実現するとしている。プロジェクト結果の詳細は、プロジェクトの終了後にまとめられる予定だ。
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