12年前に実用化していた塵芥収集装置の電動化
塵芥収集ユニットの電動化は最近始まったことではなく、ハイブリッドトラックが普及しはじめた10年以上も前から続いている話である。新明和をはじめとする日本の特装車メーカーでは、いまから12年前の2010年に塵芥収集ユニット単体の電動化を実現させていたのだ。
当時はハイブリッド車や純ディーゼル車への架装を前提とし、塵芥収集ユニットだけを電動化するため専用の蓄電装置(キャパシタやバッテリー)も搭載していたが、高電圧・大電流に対応した電動化技術のノウハウはこのころすでに手に入れている。
欧州でもほぼ同時に塵芥車の電動化開発が進められていたが、製品としての市販化や小型トラックへの架装という点で、日本の特装車メーカーは間違いなくパイオニアである。
この当時の製品は、通常の塵芥車に比べて高価で積載面の影響もあったことから大量普及に至らなかったが、そのノウハウがEVごみ収集車に活かされていることはいうまでもない。
もちろん、こんにちのBEVは当時のハイブリッド車やBEVよりも進化しているが、その流れに対応できる素地を日本メーカーは築いていたわけである。これはとても大きな財産だろう。
実証試験で問われる能力
厚木市のEVごみ収集車の実証試験は、三菱ふそう、新明和、そしてユーザーである市を加えた三者共同で進められ、納車翌日の3月15日から開始されている。
EVごみ収集車には、eキャンターにG-RXを架装するだけではなく、使用済み乾電池収集ボックスや清掃用品の収納器具といった「厚木市のオリジナル仕様」も踏襲。通常車と同様の収集作業ができる造りとなっている。このあたりはBEVであろうが、ローカルニーズは不変なところがみえる。
ただeキャンターは、厚木市で多用されている車両総重量5~6t級の小型トラック標準キャブ・標準ボディ車ベースの塵芥車よりもサイズが大きい。
いっぽう、ごみを積み込む荷箱のサイズは6.5立方メートルで、一般的な塵芥車の4.4立方メートルよりも大きいが、車両サイズの割には小さく、最大積載量は逆にマイナス400kgの1.6tに留まる。
家庭ごみや資源ごみは比重が高くないので、積載量不足で困ることはないとみられるが、やはりBEVの自重がかさんでいること、その原因である高電圧バッテリーがシャシーのスペースも占有するために、電動油圧システムと作動油、シャシー電装用12V鉛バッテリーを収めたボックスをキャブバックに設置するしかないことの影響は大きい。
このあたりはBEVトラックがディーゼル車より劣る部分だが、実際に不便かどうか、これも実証試験で明らかになるだろう。厚木市環境事業課によれば、まずはいろんなごみ収集ルートを試してから運行ルートを確定していくという。
一満充電あたり航続距離はeキャンターの100km以上に対して、EVごみ収集車では約90km程度になると三菱ふそうでは予測しており、実証試験で実力が量られることになる。
厚木市ではだいたい約80km程度のルートを設定する考えのようだ。拠点は厚木市環境センター(ごみ処理施設)で、充電用の電力も、集めたごみを焼却した熱を利用した蒸気タービンから発電するなど、ゼロカーボン化が図られている。市のごみ収集事業は朝や昼に稼働するので、夜間を利用して約8時間ほど通常充電が行なわれる。
EVごみ収集車はダイムラートラックから5年リースで使われる予定だが、実証試験の経過をみながら、今後2年おきに計2台のEVごみ収集車を追加する計画である。
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