■「遂に私にも来たか!」 腰痛を発症して思った元気な身体の大切さ
いろいろな業種でドライバーをしてきた迦月さんは、現在は航空貨物を運んでいる。でも、やっぱり腰を痛めてしまったんですね。
実は一昨年の暮れにちょっと腰を痛めたことがあるんです。
具体的にこの作業をして痛めたというものではないのだけど、ある程度の重さの荷物の積み降ろしが、気がついたらかなり辛い。その時は「あ~、私にも遂に来たか」って思いました。ずっとこのままだとこの仕事続けるのは辛いな、というくらいには痛い。
当時診てもらった人に言われたのが「1年前よりだいぶ腰・背筋周りの筋肉が落ちている。それでもまだある程度の筋肉があるから、筋を痛めたくらいで済んだと思う。そうじゃなかったらヘルニアとか、確実に腰やられてたと思うよ」と……。
私は元々スポーツをしていたわけではないけど、20代や30代はジムに通ったり、多少なりとも運動していたので、今はまったくしていなくても、それなりの蓄積があったのだと思います。
実際、30代の時に整体で施術してもらった際「けっこう骨盤にゆがみがあるのに、痛みが出てないのは筋肉で身体を支えているから」と言われましたし……。
幸い一昨年に痛めた腰は、年末年始で少し休めたのもあって、1カ月ほどで回復しました。ホッとしましたけど、同時に「やっぱりこれはちゃんと運動もしないといかんなぁ」と痛感しましたよ。
とはいえ、今の私の仕事ではジムに通うなんて絶対に無理。一時期、仕事の合間になんとか時間を作って歩いたりもしたんですけど、その時間を作りだすこと自体が精神的に苦痛になって来ちゃって……。
でもこのままだといつまた同じことを繰り返すかわからない。負担にならずに続けられる事をいろいろ考えて試して、今は家に帰れたちょっとの時間でダンベルと腹筋、スクワットといった軽い運動を心がけています。時間にして5~10分程度、週に3~5日くらいです。
たったこれだけなんだけど、一年前に比べて確実に筋量増えてきたのが実感できますね。
ドライバー不足はこの先加速度的に増していくんでしょうけど、私達は少しでも元気に仕事を続けて行くことができるよう、ムリしすぎない程度に健康を維持していきたいですね。
目指すのは、目先のことではなく、10年後20年後も同じように仕事を続けていける元気な身体です。そしてそれは、この先、自分自身の財産としても残っていくでしょうから……。
* * *
たまたま女性ドライバー3人の体験談となったが、もちろん腰痛に男女の区別はない。「陸災防」によると、届け出が出された「業務上腰痛」の4分の1は「概ね1カ月以上の休業見込み」となっており、ドライバーの腰痛は運送会社にとっても業務に支障を来たしかねない事態だ。では、その発生状況を見てみよう。
■腰痛災害の発生状況は?
ドライバーの腰痛災害は曜日別、時間帯別の発生状況に偏りがある。以前から言われていることだが、曜日では月曜日に多く、時間帯では午前、特に8時から10時までが極端に多くなっている。
作業開始時間などは事業所によってさまざまだが、月曜日の朝一番など休日明けや始業時などは腰痛災害のリスクが高くなる。身体をよくほぐすなど作業者側の対策だけでなく、作業量が多くなりすぎないよう気を付けるなど管理者側の対策も求められる。
年齢区分別では、20歳代から40歳代前半までで特に高くなっている。
腰痛は日頃からの腰部への負荷が蓄積する要因を無視できないが、ぎっくり腰など災害性腰痛の多くは、荷物の持ち上げなどをきっかけとして発生していることから、作業量や作業スピードを抑制しつつ、正しい荷扱いや作業方法の習得と遵守が欠かせない。
腰痛は、労働者の作業行動から生ずる労働災害が多くを占めており、事業者が必要な措置を講ずるべきで、日々の作業量、荷物の重量や大きさ、正しい作業方法を指示すると共に適切な休息時間や労働環境などを整備することが求められる。
いっぽう、ドライバー不足ということもあり、作業者の体格や筋力、熟練度、健康状態などはさまざまだ。作業者自身にも個々の荷の取扱いなどで正しい方法を習得し、実践することが求められる。
腰痛予防のためには、管理者・作業者の双方が正しい知識を持って対策を講ずることが重要となる。こうした観点から厚生労働省では、陸上貨物運送事業に特化した腰痛予防に留意すべきポイントを動画教材として作成し、広く提供する予定だ。