■ホーンは鳴らすため、ライトはパッシングするためにあるもの
そしてインドのもう一つの「風物詩」がクラクションとパッシングである。前を行くクルマを追い抜くときは、立て続けにクラクションを鳴らし、パッシングをかまして、蹴散らすように追い抜くのだ。
渋滞は日常茶飯だが、渋滞にハマって身動きとれなくともクラクションを鳴らして一歩でも前へ出ようとするから、これはインド人の前向きな姿勢、ポジティブな気質のあらわれと考えたほうがいいのかもしれない。
■無秩序のようで暗黙のルールあり?
ところで、クラクションにパッシング、ルール無視の「われ先」運転だから、さぞや至るところでケンカが勃発し、交通事故も多いのではないかと思うだろうが、さにあらず。われわれの4日間の滞在中、ケンカはおろか交通事故もほとんど見なかった。
もちろん、統計的には日本の8倍の事故発生率といわれているので、たまたまなのかもしれないが、傍目には「無秩序」に見えても、インドの人たちには暗黙のルール・暗黙の了解事項が存在するのだろう。
それは、「交通ルールを守りましょう」といったお仕着せとは対極の、もっとプリミティブなこの地で生き抜くための約束事のような気がする。
■バスの最前列でアドレナリン出まくりの貴重体験
写真撮影のため、ほとんどバスの最前列の席に座らせてもらっていたのだが、こちらの車線にはみ出して迫ってくる対向車やギリギリでの追い抜き、道路への飛び出し。
さらに急加速、急ブレーキ、絶え間ないクラクションにパッシングなど、連日アドレナリンが出まくり、ほとほと疲れたものの、なぜかそれが癖になってしまったことも告白しなければなるまい。
南インド・チェンナイ、そこは、すさまじく生命力の溢れた街だった。願わくば、一刻も早くコロナ禍を脱し、あのエネルギッシュで生命力溢れる光景を取り戻してほしいものだ。