ついに現れたEVトラック用のPTO
そして、IFATに出品された「eアクトロス300」ですが、これには最新の汎用ePTOが搭載されていました。働くクルマの世界では、とても大きなトピックスだといえます。
この汎用ePTO自体は、ドイツのZFフリードリヒスハーフェン社が新開発した「eWorX(eワークス)」というユニットですが、IFAT展示車に搭載されているものは、ダイムラートラックとZF、それぞれの架装メーカー(ドイツのマイラー社とオーストリアのパルフィンガー社)が共同開発したものです。
「eWorX」は、「eアクトロス300」の高電圧バッテリーの電力から直接、内蔵するモーターを作動させて、エンジンの代わりに出力を外部供給するシステムです。そのため油圧ポンプは、従来のものをそのまま使用することが可能となっており、優れた汎用性を実現しています。
電力制御システムには、SiC(シリコンカーバイト)のパワー半導体を導入しており、次世代電動車で標準的な電圧スペックとされる800Vにも対応可能になっています。ePTO作動時には、シャシーと架装物をCAN通信によって連絡し、「eWorX」が総合的に電力マネジメントを行ないます。
ePTOの特徴として「必要な時しかエネルギーを使わない」というメリットがあります。例えば、油圧が必要な場合、その時だけモーターをパッと回せばよいので、作業していない時は電力を消費しません。従って、意外に電気を喰わないと考えられています。
ディーゼル車で同じことをやろうとすると、いちいちエンジン始動・PTO運転・停止といった状況になりますから、エンジンをかけたままのほうが効率的です。しかし、燃料消費や排ガス・騒音が生じたままになるのも確かです。
また、さまざまな用途・架装物に対応できるよう、「eWorX」は5つの出力レンジが設定されており、モジュールの組み合わせで最適なシステムが構築できるようになっています。こういったフレキシブルな適合性も汎用コンポーネントには必要というわけで、IFAT出品車の「eWorX」も、その組み合わせから構築されています。
併せて、そもそもPTOというメカニズムを使わない冷凍車向けの、電力供給システムも開発されました。筆者としては、こんなところにもBEVの新しい自動車技術の世界を垣間みるところです。
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